ミュージシャン・ダースレイダーが『セルフ透析はじめました』で伝えたかったこと――病気になっても自由に生きる選択

『セルフ透析はじめました』KADOKAWA 1,900円(本体価格)、著者:ダースレイダー

『セルフ透析はじめました』KADOKAWA 1,900円(本体価格)、著者:ダースレイダー
ダースレイダー:1977年パリ生まれ。ミュージシャン、ラッパー。東京大学を中退後、2000年にMICADELICでメジャーデビュー。’10年に脳梗塞で倒れ左目を失明。その後も糖尿病や腎不全など複数の病気と闘い続けている。人工透析治療などを続けながら音楽やメディア活動を精力的に行う。

33歳で襲った突然の脳梗塞

──透析を始めた経緯を教えてください。
ダース 2010年、33歳のときに脳梗塞で倒れました。そのとき、合併症で左目の視野が欠損し、その後は眼帯を使用しています。脳梗塞の原因の一つは糖尿病で、このとき以来インスリンを使って血糖値をコントロールしています。40歳のときに、このまま手を打たなければ5年後には死ぬ可能性があると言われました。腎機能の悪化は止まらず、毎日吐き気に襲われるようになったので、観念して透析を導入しました。

──日常生活でさまざまな制限があると思います。実際はどうですか?
ダース 透析は人工腎臓で血液をろ過して、老廃物や体内の水分を除去する治療です。1週間に3回、1回最低4時間の治療が必要です。始める前は自分の人生のスケジュールが強制的に決まることが本当に嫌でしたが、今はそのルーティンに合わせて予定を組むようにしています。食事制限はかなり緩く、好きなものを食べています。治療があるので旅行やライブツアーは諦めていたのですが、旅行透析という制度で、出先のクリニックに受け入れてもらえれば、移動もできることが分かって来ました。

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人工透析がもたらした希望

──セルフ透析とは、どのようなものなのでしょう?
ダース 僕はミュージシャンなので、定時の仕事はありません。朝からレコーディングの日もあれば、夜にライブ、昼間にラジオ出演、急に明日のスケジュールが入ることもあります。こうしたライフスタイルを諦めなければならないのが一番つらかったのですが、セルフ透析なら治療の準備から針刺し、片付けまで自分でやる代わりに、治療時間も自由に設定できます。2カ月ほどのトレーニングで手順を覚えれば、かなり自由度が上がります。看護師も常駐しているので、困ったらすぐに助けてもらえます。

──これから透析治療を始める人に、伝えたいことはありますか?
ダース 透析は始めてみると発見も多く、何よりも日々の体調が画期的に改善します。セルフ透析は自分で自分を治療するので、気持ちも能動的になります。僕はこれを、F1のピットインに例えています。走り続けるための整備だと。治療を続けるために生きるのではなく、生きるための治療。ここでいう「生きる」とは、ただ生命を維持することではありません。自分の意思と価値観に基づいて、主体的に行動することです。透析だからといって「生きる」を諦める必要はない。むしろ、新しい挑戦をして生きることができます。
(聞き手/程原ケン)

「週刊実話」10月22日号より