「人生をかけてハマれるものにハマったほうが幸せ」キノコライター・堀博美が語る“終わらない探求”【死ぬ前にやっておくべきこと】

キッタリアは南半球の温帯地域に生息する(C)週刊実話Web

8冊目の著書でも初心を忘れず

福本浩子が本にキノコを生やす一方で、キノコライター堀博美は、現在自身8冊目となるキノコ本、子ども向けのキノコ図鑑を手掛けている。

キノコの有り余る魅力は、どこを切っても終わりがない。その愛らしさも含め、見て良し、食べて良し、愛でて良し、飛んで良しと、楽しみ方は人とキノコの数だけある一方、毒キノコ、マジックマッシュルームなど、使い方を誤れば死に至る危険さもある。だからこそ、専門的な知識を踏まえた上で、一般向けにどれだけ翻訳できるのか。

堀は自戒も込めて、自らのことを「永遠の初心者」と位置付けている。

「キノコというのは奥が深すぎて、追求すればするほど、ややこしいことになるんですよ。ついこのあいだも説明文の原稿を、監修の先生に『不正確や』と指摘されたばかりなんですけど、やっぱり、この立場になってきたら、もっと勉強して常にアップデートしていかなあかん。だけど、キノコは難しいんですよ。難しいのに、食べられたり当たったりするものですから、いつまでも初心者の心づもりで、本当に慎重にやらなあかんのです」

このキノコを突き詰めれば、どうなるものか。毒にあたって志半ばで倒れるか、キノコと共に朽ちていくのかは分からない。だが、堀は『死ぬ前にやっておくべきこと』への答えを完璧に用意していてくれた。

「人生をかけてハマれるものにハマったほうが幸せやと思うんです。でも、それを間違って理解してしまったら、人生が破壊されることもある。だから私自身は、キノコのアートを広めたり、キノコのことを知ってまたアウトプットしたり、そういうことをやめずに続けていければと思うんです。世界のいろんなところで本からキノコを生やしたいし、キッタリアも見てみたい……贅沢を言えば本を生やしにチリに呼んでもらって、空いた時間でキッタリアを棒で叩き落としたい(笑)。まだまだやりたいことはありますが、この先、年を取ってできなくなってしまうことも出てくるでしょう。でも、それはそれで、また見えてくるものがあるんやないですかね」

キノコと共に生きてきた堀らしい答えだった。

キノコは朽ちた木や亡骸を土に還し、その土からまた森が立ち上がる。キノコは食べるだけじゃない。一冊の本が読まれなくなっても、そこから生えたキノコがまた誰かの目を奪う。この地球の凄まじき循環システムの箱庭のようなキノコの世界に、終わりというものはないのかもしれない。

暑い夏は過ぎ、今年もキノコの秋がやってきた。永遠の初心者は、京都の片隅で菌と共に暮らしている。
 (完)

「週刊実話」10月15日号より