後見役か、乗っ取りか…金正恩氏に万一の時、叔母・金与正氏と姪ジュエ氏に権力闘争の恐れ

8月14日の式典に映った叔母と姪の距離

さて、8月14日。正恩氏は祖国解放81周年に合わせ、平壌の大城山革命烈士陵を訪れた。国営メディアが公開した写真や映像を見ると、同行した幹部たちが暗い色のスーツで居並ぶ中、正恩氏の娘のジュエ氏と妹の与正氏は、それぞれ別の意味で目を引く装いだった。ジュエ氏は両親の間の中央に立ち、鮮やかなピンクのスーツ姿。一方の与正氏は、一歩引いた位置で白いジャケットを着ていた。

「北朝鮮では地位が高くなればなるほど目立つことを避ける傾向があります。粛清の対象とされる『不正蓄財』と並ぶのが、ライバルたちからの『最高指導者への告げ口』だからです。北朝鮮では『最高指導者との距離の近さが権力の大きさを決める』という不文律がありますが、この距離の近さでは誰も与正氏を抜くことができない。国営メディアの配信写真を見ると、黙礼の際に正恩氏夫妻とジュエ氏だけが、首だけを前に傾ける最高指導者スタイルを取る一方、そのフレームには与正氏は入っていませんでしたが、恐らく他の幹部と同じように深々と上半身を折り曲げていたのでしょう。でないと、どんな告げ口をされるか分かりませんからね」(別の外交関係者)

後継者として扱われているジュエ氏はともかく、与正氏が他の幹部とは違う装いで臨んだ点には、ロイヤルファミリーとしての格別の自信がのぞく。このままいけば、いずれジュエ氏が後継者の座を不動のものにするだろう。ただ、現在推定13~14歳の彼女が権力基盤を固めるには、最短でも10年ほどはかかるはずだ。

正恩氏に万一なら…摂政か簒奪か

もし、その間に正恩氏が健康悪化で倒れたらどうなるか。与正氏が『党第1書記』(’21年新設)のポストに就き、若きジュエ氏の摂政として実権を握るシナリオが現実味を帯びてくる。

さらには、権力継承の過程で与正氏自身がトップの座を奪い取る可能性すら否定できない。その際、共に相手を“亡き者”とする叔母、姪の権力闘争が北朝鮮の歴史の宿命として起きるかもしれない。

「朝鮮労働党高級幹部層の『赤い貴族』にとっては、自分たちの特権さえ守られれば、トップがジュエ氏であろうと与正氏であろうと知ったことではない」(前出・国際ジャーナリスト)

ジュエ氏には、すでに不穏な兆候が表れている。

「今年6月、新義州の温室農場視察時に手首につけていたジュエ氏の腕時計は約3000万ウォン(約340万円)のカルティエのアイテムと推定されます。’23年には、まだ10歳前後で370万ウォン相当のクリスチャン・ディオールの黒コートを身にまとっていました」(北朝鮮ウオッチャー)

外国文化に触れている青年層からは当然、「自分たちを服装や髪型で取り締まる前に、本人がまず国産の服を着るべきではないか」との声が出ている。つまりは、あからさまな「二重基準」に対する反旗が翻っているのである。

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