福永恵規『風のInvitation』が映す“おニャン子クラブ絶頂期”と1986年の最高傑作【スージー鈴木の週刊歌謡実話第45回】

ボーイッシュなアイドルと疾走するロック

福永恵規は、おニャン子クラブの中で異彩を放っている存在でした。ショートカットでボーイッシュで、何というか、たたずまいが都会的なのです。

それもそのはず、初期おニャン子クラブで東京に住んでいたのは彼女だけだったらしい。本当かしら。でも『会員番号の唄』(もちろん’86年)で「東京在住は私だけ 都民の日には 休めるんだヨーン」と歌っているのですから。

前年に、こちらも傑作=中村あゆみ『翼の折れたエンジェル』を手掛けた高橋研によるサウンドは、何とブルース・スプリングスティーン風。彼の『明日なき暴走』(’75年)にも似た快調なロックビートは、アイドル歌謡の枠をぴょんと超えている。浜田省吾や佐野元春、尾崎豊にカバーしてほしかったな。

さらに、そんなサウンドに乗る秋元康の筆が冴えわたる(こちらもすでに紹介した小泉今日子『夜明けのMEW』含め、’86年は作詞家としての彼のピークだと思います)。あぁ、ほんまにええ曲やわ。

最後に。おニャン子クラブのファンの中に福永恵規派は少なかったと思います。おそらくは都会派・洗練志向、キャンディーズでいえばミキ派とかぶるはず。その1人は、そう私です。

「週刊実話」9月10日号より

スージー鈴木/音楽評論家

1966(昭和41)年、大阪府東大阪市出身。『9の音粋』(BAYFM)月曜パーソナリティーを務めるほか、『桑田佳祐論』(新潮新書)、『大人のブルーハーツ』(廣済堂出版)、『沢田研二の音楽を聴く1980―1985』(講談社)など著書多数。