中森明菜『水に挿した花』が映す“心の暗部”と今こそ歌うべき理由【スージー鈴木の週刊歌謡実話第43回】

「元アイドル」ではなく今を歌うシンガーへ

「ああ ごめんなさいね ついてはゆけない」「形をかえた痛み ふたたび手に入れるだけ」――つまりは「そう簡単にポジティブになんかなれないわよ」宣言とも言える歌詞。

何が言いたいかというと、これからの中森明菜に期待するのは、『ミュージックステーション』のときのように、語りかけ、振り絞るようなスタイルで『水に挿した花』を歌うようなシンガーになってほしいということです。

さらにいえば、例えば不景気、不愉快、不健康……同世代女性の心に潜む暗部としての、数々の「不」と共鳴する歌を歌うシンガーになってほしい。

極端な若作りをして、昔のファンを相手だけに閉じた活動をする「元アイドル」が多くいます。ただし、中森明菜にはそんなの、劇的なまでに似合わない。やはり彼女には同時代性がよく似合う。

だからこそ、今の同世代女性に『水に挿した花』を届ける存在になってほしい。私はそう考えます。『中森明菜の音楽1982-1991』(辰巳出版)という本を書いたこともある評論家として。

「かつて愛された日を もう一度とり戻せるわ」――『水に挿した花』には、こんな歌詞もあるのですから。

「週刊実話」9月3日号より

スージー鈴木/音楽評論家

1966(昭和41)年、大阪府東大阪市出身。『9の音粋』(BAYFM)月曜パーソナリティーを務めるほか、『桑田佳祐論』(新潮新書)、『大人のブルーハーツ』(廣済堂出版)、『沢田研二の音楽を聴く1980―1985』(講談社)など著書多数。