日本史上最恐のストーカーも!? 『毒婦の日本史』著者が明かす“悪女伝説”の真実

『毒婦の日本史』鉄人社、1,700円(本体価格)、著者:小林 明
『毒婦の日本史』鉄人社、1,700円(本体価格)、著者:小林 明
こばやし・あきら:1964年、東京都生まれ。スイングジャーナル社、KKベストセラーズなど出版社の編集者を経て、2011年に独立。現在は、編集プロダクション・株式会社ディラナダチ代表として、歴史・文化風俗史の記事などを発信。

噂だけでは語れない毒婦の正体

──そもそも毒婦とはどんな女性なのでしょうか?
小林 「毒婦」の定義といってもいろいろあると思いますが、本書では「評判の悪い女性」と位置付けています。人々が「あの女はとんでもなく性悪だった」と噂した、悪評プンプンの女たちを毒婦としました。つまり噂であって本当の姿は分からない、実像を探ってみようというのが本書の狙いなんです。

──まるでストーカーのような女性もいたとか。
小林 歌舞伎や人形浄瑠璃の演目として知られる「清姫」は紀伊国(現在の和歌山県)に言い伝えられてきた物語の主人公で、日本史上最恐のストーカーといわれます。逃げた男を追いかけているうちに大蛇と化し、最後は殺してしまう。また、美濃国(現在の岐阜県)にも男を怨んで頭に角が生え、行方をくらました鬼女の昔話があります。女が蛇や鬼になる話は古い説話などにも記されていて、かなり前の時代から女性ストーカーがいたことが分かります。怨みから男を殺害してしまう女は、遥か昔からいたんでしょう。

【関連】ホルムズ海峡危機で何が起きたのか――海運研究者が明かすコンテナ輸送の知られざる現実

男への怨みが生んだ壮絶な復讐劇

──かつて日本には「後妻(うわなり)打ち」という風習があったそうですね。
小林 男への怨みといえば「後妻打ち」という風習もありました。後妻を前妻が打つ、つまり男を盗られた怨みを晴らすことです。後妻といってもかつての日本は一夫多妻制ですから、「後からやってきた妻」つまり貴族や武士の妾や側室の住む家を、正室(本妻)が手下を引き連れて襲撃し、建物や家財道具を徹底的に破壊する…これを後妻打ちといいました。源頼朝の妻、北条政子が頼朝の愛人宅を粉砕した事件が有名です。サレ妻(被害者)が復讐する唯一の方法だったわけです。それを女だけを一方的に「毒婦」「悪女」と決めつけるのも、ちょっと可哀想じゃね…という見方があってもいいと思うんですけどね。

──平成の毒婦といえば、首都圏連続不審死事件の木嶋佳苗が思い出されます。現代の毒婦の特徴は?
小林 木嶋佳苗はカネ目的の本当の「毒婦」で、婚活サイトなどを利用してカモを探すという、いかにも現代的な犯罪者ですよね。毒婦の定義も時代に応じて変化するんでしょう。一方で、不倫した女性タレントを悪女として集団リンチのように叩いたり、資産家と結婚した女性を「カネ目当て」と中傷したりといった風潮は、昔と驚くほど変わっていません。ああいうのを見ると病んでいるのは毒婦と呼ばれた女たちなのか、それとも彼女たちを叩く社会なのか。もはやどちらなのか分からないですよね。
(聞き手/程原ケン)

「週刊実話」8月13日号より