空から魚、満潮ノーゲーム、幻の初アーチ…プロ野球の雨天中止・コールドゲームがもたらしたNPB衝撃アクシデント5選
◆ 2016年阪神―ヤクルト戦、「空から魚」で一時中断…甲子園を騒然とさせた“空飛ぶ魚”事件
雨天中止でも台風でもない。2016年5月8日の阪神タイガース―東京ヤクルトスワローズ戦(甲子園)、聖地のグラウンドに乱入して試合を止めたのは「魚」だった。
ヤクルトの攻撃中、ラッキーセブンの甲子園のライト定位置付近に、突故として体長30センチほどの魚(ニシン科のサッパとみられる)の死骸が落下した。上空を飛んでいた鳥がくわえていた獲物を落としたとみられているが、強烈な生臭さが周囲に漂い、現場の選手も審判団も一瞬何が起きたのか理解できず騒然となった。
試合は一時中断され、阪神の私設応援団員が素手で魚を回収するというシュールな光景が展開された。甲子園で上空から降ってくるものといえば雨が相場だが、その日に限っては文字通りの「珍客」だった。
阪神の本拠地・甲子園球場における天候や外部環境のトラブルは数多いが、その中でもこの「魚乱入」は完全に異質。屋外球場特有のアクシデントとして、今なお語り継がれる奇妙な1ページだ。
◆ 1980年、衣笠祥雄の連続試合出場「日本タイ記録」が豪雨ノーゲームで消えた夜
「鉄人」こと広島東洋カープの衣笠祥雄が、連続試合出場の日本記録に挑んでいた1980年夏、天候によって歴史の歯車が狂った一夜があった。
同年7月29日、広島市民球場で行われたヤクルト戦。この試合は、飯田徳治が保持していた1246試合連続出場の日本タイ記録が懸かった極めて重要な一戦であり、球場は偉業達成の瞬間に向けて独特の緊張感に包まれていた。衣笠も実際にグラウンドへ立ち、試合は進行していった。
しかし5回裏、激しい豪雨によって試合が中断。約30分間の天候回復を待ったものの、審判団はノーゲーム(試合不成立)を宣告した。
公認野球規則の規定により、5回が完了していなかったため、この日の試合自体が公式記録から完全に消滅。衣笠がグラウンドに立った事実も記録上は「なかったこと」になり、日本タイ記録の達成は翌日以降へと持ち越しを余儀なくされた。
衣笠はその後、7月31日に改めてタイ記録を達成し、8月4日の巨人戦でついに日本新記録となる1247試合連続出場を樹立した。雨は鉄人の歩み自体を止めることはできなかったが、天候によって公式記録が書き換えられた象徴的な事例である。
◆ 1938年、巨人―金鯱戦が「満潮ノーゲーム」に…海に沈んだ旧・洲崎球場の幻の公式戦
プロ野球がまだ産声をあげたばかりの1938年3月15日、東京巨人軍―名古屋金鯱軍の公式戦が行われていた東京・江東区の洲崎(すざき)球場で、前代未聞の事態が起きた。試合の途中、グラウンドに大量の水が流れ込んできたのだ。
原因は雨ではない。なんと、海の「満潮」だった。
当時の洲崎球場は東京湾の埋め立て地に建てられており、満潮の時間帯と重なると海水がグラウンドに浸水するという致命的な欠陥を抱えていた。この日の試合は5回裏の途中で続行不能となり、コールドゲームではなくノーゲーム(試合不成立)となった。
雨天中止ならぬ「満潮中止」という、後にも先にも例を見ない珍記録。球場のスペックに海面の高さが関係する公式戦など、現代のドーム全盛期のファンには想像すら難しいだろう。日本の野球史を語るうえで外せない、最古の気象トラブルである。
◆ 天候リスクがペナントレースの行方を左右する
これら5つの事例が示す通り、ドーム球場が主流となった現代プロ野球においても、屋外スタジアムと自然環境の組み合わせは依然として公式戦に甚大な影響を与え続けている。
満潮による浸水や上空からの飛来物といった特殊なアクシデントは極端な例としても、降雨による大量リードの消滅や、過酷なコンディションでの強行、 Shelton、そして公式記録の抹消といった事態は、チームの勝敗や個人のキャリアを物理的に狂わせるリスクを常に孕んでいる。
特に今季は、週明け以降も前線の停滞や度重なる台風の接近が予測されており、各球団にとってはドーム球場と屋外球場の「消化試合数の格差」が後半戦の大きな火種となる可能性が高い。ペナントレースの覇権を握るためには、純然たる戦力だけでなく、天候リスクを見据えた球団フロントのマネジメント能力が今まさに試されている。
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