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『ミナミハタンポ』静岡県西伊豆町/堂ヶ島産~日本全国☆釣り行脚

『ミナミハタンポ』静岡県西伊豆町/堂ヶ島産~日本全国☆釣り行脚
日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web 

ワタクシのような中年男性の大好物である〝夜の街〟。華やかさと妖しさが入り交じった複雑な魅力に、われわれは吸い寄せられてしまうわけですが、〝夜の海〟にも同じような魅力があるものです。

というのも、夜行性の魚は暗闇に乗じてエサを求めて浅場へと回遊するため、何が釣れるか分からないという独特の魅力があります。しかも、初夏から秋にかけては水温の上昇傾向が著しく、釣れる魚のバリエーションが増えますから、よりいっそう夜釣りにワクワクしてしまうのですね。

そんな魅力あるオトナの夜遊びを楽しむべく、仲間と静岡県の西伊豆を訪れました。釣り場となる堂ヶ島の遊覧船乗場前の磯は国道の直下に広がっており、駐車場からも至近。地磯釣行では不可避の苦行「磯歩き」をほとんどせずに済むのです。そういえば、少し前に「健康のためにもう少し歩きましょう」と注意された覚えがありますが、忘れたことにしておきます。

そんな楽チン磯ですが、50センチオーバーのクロダイや60センチオーバーのハマフエフキなど、過去の大物実績は十二分。掛かる魚種も豊富な好釣り場なんですね。

まだ明るさが残る18時頃に磯に到着し、逸る気持ちを押さえつつ準備にとりかかります。日中に南西風が吹いていたせいか、外海はややシケ気味。外海に面した磯は波をかぶっていましたが、こちらは入り江の奥に位置しているため至って平穏です。むしろ外海がシケているくらいが好条件となる場所ですから、いやが上にも期待は高まります。

仲間の釣果に羨望の熱視線

さて、ワタクシはブッコミで、仲間は電気ウキを使ってエサを流しつつハマフエフキのアタリを待ちます。

「ブン! ブブンッ!」

イカやサバの切り身を付けて投入したブッコミには、早々にアタリが出始めました。特徴的な鈍いアタリの主は、この釣りでは定番外道のウツボによるもの。その多さにはやや辟易しますが、こういった邪魔者が高活性なときほど、本命も活性が高いもの。状況として悪いものではありません。

「ハタンポ釣れた~」

しばしウツボと戯れていると、ウキ釣りをしていた仲間から声が上がりました。聞けば開始直後からフグの猛攻に悩まされていた中、急にコイツが釣れたとのこと。大物や攻撃性の強い魚がエサに寄ってくると、直前まで続いていた小魚のアタリが急に止まることは珍しくありません。

「急に静かになったから、ちょっと楽しみだったんだけどなぁ~」

ガッカリな展開に仲間は落胆していましたが、「まだまだこれからだから~」と月並みな言葉を掛けつつ、釣り上げられたミナミハタンポに目が行ってしまうワタクシ…。

ハタンポといえば磯からの夜釣りではしばしば目にする小魚で、本気で狙う人はほとんどいません。典型的な夜行性の魚で、日没後になると岩陰から出てきて群れで活動する習性があります。ゆえに磯からの夜釣りではうっとうしいほど釣れることも多く、イサキやメジナなどを狙う釣り人からは敬遠されています。

そんな外道扱いの小魚ですが、実は食味のよい魚として知る人ぞ知る存在なのです。何かにつけて節操のないワタクシとしては、実に羨ましい限り。

高級魚に似た後引く旨さ!

「いいサイズですねぇ!」

「コイツ、旨いんですよ」

「久しく食べてないなぁ」

そんな言葉を連発していたところ、仲間も察してくれたようです。

「こんなのでよければ…」

マジで? ありがたや~。

半ば催促するように貰い受けたハタンポは、定番の塩焼きでいただきます。旨い魚はシンプルな食べ方が一番ですからね。

こんがりと皮目が焼き上がった頃合いで皿に取り、晩酌を開始。モチモチとした食感の白身は小魚ながらに旨味が濃厚で、人気のノドグロ(アカムツ)にも似た濃ゆ~い味わいです。帰りがけに買った特別限定ビール『アサヒ 富士山』と合わせていただく晩酌は、実に幸せに満ちておりました。もう何尾か釣ってくれればよかったのに…。

外道扱いの小魚は釣り場では軽視してしまいがちなのですが、味を占めてしまうと「もっと食べたい…」となるもの。数年ぶりに味わう、その旨さに「今度はウキ仕掛けを持参して専門に狙ってみようかしら?」などと思った初夏の夜でありました。

三橋雅彦(みつはしまさひこ)
子供のころから釣り好きで〝釣り一筋〟の青春時代を過ごす。当然のごとく魚関係の仕事に就き、海釣り専門誌の常連筆者も務めたほどの釣りisマイライフな人。好色。

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