岩崎宏美『思秋期』が映す“20歳引退”の危機と父娘を結んだ1977年の涙【スージー鈴木の週刊歌謡実話第37回】

名曲がつないだ父娘のその後

しかし、さらに泣けるのは、そこから。19歳・岩崎宏美の思いが通じたのか、『思秋期』を聴いてからお父さんは、「歌手をやめなさい」とは一切言わなくなったというのです。

いい話だなぁ。

そのお父さんのおかげさまで、岩崎宏美は今もバリバリの現役なのですから。

あと、この対談では、彼女がNHK紅白歌合戦に出場したとき、美空ひばりも出場(’79年紅白)。紅組の出場歌手が、ひばりのバックで手拍子を打つという演出があったのですが、そのとき、舞台に立っていた紅組の出場歌手が、みんな感動で泣いていたという話もよかったのです。

話を戻すと、一般的に岩崎宏美は『ロマンス』(’75年)、『シンデレラ・ハネムーン』(’78年)などの「作詞:阿久悠、作曲:筒美京平」作品で語られます。

しかし『思秋期』は、作詞こそ阿久悠ですが、作曲は筒美京平ではなく、三木たかし。

徹底的にリスペクトされ、あれこれうっとり語られがちな筒美京平に対して、三木たかしワークスも、もう少し語られてもいいのではないでしょうか。

どの曲から? もちろん『思秋期』からですよ。

「週刊実話」6月25日号より

スージー鈴木/音楽評論家

1966(昭和41)年、大阪府東大阪市出身。『9の音粋』(BAYFM)月曜パーソナリティーを務めるほか、『桑田佳祐論』(新潮新書)、『大人のブルーハーツ』(廣済堂出版)、『沢田研二の音楽を聴く1980―1985』(講談社)など著書多数。