署名活動では覆らない時代へ…蝶野正洋が語る“コンプライアンス社会”の現実【蝶野正洋の黒の履歴書】

「謹慎して復帰」はもう昔話

始まりはよくある家庭内のトラブルで、それがいろいろな人を巻き込んで大ごとになってしまうというのが現代的だし、誰の身にも起こる可能性がある。

別に娘さんも、日ごろから人に迷惑をかけるようなタイプではないと思う。子供なら、誰でもそういう時期がある。姉妹喧嘩もするだろうし、反抗期で親に歯向かったりする。そんな衝突を家庭内で繰り返して、人は成長していく。そこに、行政や周囲の人間がどこまで介入するのかという見極めは難しいよ。

それに阿部さんが即日解雇されて、現場を離れるというのも今どきだよね。まずは事情聴取して実態を調査してから判断するとか、しばらく謹慎するなどワンクッションあってもいい。今回は速やかに処分だけが進んで、検証しないまま事件に蓋をしてしまった感がある。現代における上場企業のトラブル処理としては、これが最善なんだと思うけどね。

ひと昔前だったら、まずは謹慎してオールスター明けくらいに復帰し、敵チームのファンからヤジを飛ばされながら奮起する…みたいな展開もあったはず。メジャーリーグに話題を持っていかれてしまっている日本のプロ野球界としては、注目を集める手段になったかもしれないよ。

でも、今はもう通用しないだろうね。ファンの間では監督復帰の署名活動が起きたけど、そんなアナログな方法でいくら騒いだところで、ひっくり返るような時代でもなくなってきている。コンプライアンスという言葉をよく見かけるようになったけど、そんな時代の移り変わりを象徴するような出来事だったと思うよ。

「週刊実話」6月25日号より

蝶野正洋(ちょうの・まさひろ)

1963年シアトル生まれ。84年に新日本プロレス入団。「nWo JAPAN」を率いるなど〝黒のカリスマ〟として活躍し、2010年に退団。現在はプロレス関係の他に、テレビやイベントに出演するタレント活動、「救急救命」「地域防災」などの啓発活動にも力を入れる。