「相手に『自分から話した』と思わせる」元公安外事警察が明かすスパイの会話術

勝丸円覚著『スパイに学ぶ「あざとい」会話術 ビジネスに役立つ諜報員の言葉の魔法』講談社 1,400円(本体価格)

『それってホントに「勝ち組」ですか? 現代格差の読み解き方』鹿砦社 1,600円(本体価格)著者:勝丸円覚
かつまる・えんかく:1990年代に警視庁入庁。2000年代初めに公安に配属されてからは、一貫して公安部外事警察で勤務。在職中、数年間外国の日本大使館に派遣。帰任後、在京の150以上ある外国大使館のリエゾン(連絡担当)兼セキュリティーアドバイザーを務める。

デキる人ほど「自分の話」をしない理由

──スパイの会話術が仕事の役に立つのはなぜですか?
勝丸 スパイの目的が「情報収集」と「関係構築」の2つに尽きるからです。これは営業、マネジメント、交渉といったビジネスのほとんどの場面と重なります。相手に警戒心を抱かせず、本音や有益な情報を引き出す。この技術は顧客対応でも社内調整でも、極めて有効に機能します。特に「聞く力」と「相手中心の対話姿勢」は、信頼を生み、そのまま成果につながっていきます。

──初対面の相手に良い印象を与えるにはどうしたらいいでしょうか?
勝丸 スパイは、第一印象を徹底的に管理します。清潔感と場に合った服装。適度なアイコンタクトと自然な笑顔。相手の話を遮らない傾聴姿勢。共通点を素早く見つける観察力。人は結局のところ、「自分に関心を持ってくれる相手」に好感を抱くものです。自分をアピールしすぎるより、相手に気持ちよく話してもらうこと。これに尽きます。

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「ハッタリ」「挑発」「知らないふり」というテクニック

──信頼関係を築く「ミラーリング」とはなんですか?
勝丸 相手の仕草、話すスピード、声のトーンなどに、さりげなく合わせていく技術です。これだけで、無意識のレベルで親近感が生まれます。効果的に使うコツは、やりすぎないことと、ワンテンポ遅らせて合わせること。そして、言葉遣いや価値観にも共鳴させていくことです。ゆっくり話す相手にはこちらもペースを落とす。それだけで、「この人は話しやすい」と認識してもらえます。

──スパイならではのテクニックを教えてください。
勝丸 まずは“ハッタリ“”です。あえて自信ありげに話すことで、相手に「この人は詳しい」と思わせ、情報を引き出すきっかけを作る。次に“挑発”。軽い疑問や異論を投げかけ、相手に「説明したい」という心理を起こさせる手法です。第二次世界大戦中に日本で活動したソ連のスパイ・ゾルゲも、この手法を巧みに使った人物のひとりでした。

──最後は“知らないふり”です。すでに知っている情報でも、あえて知らないふりをして相手に話させ、裏付けを取る。情報収集の基本技術ですね。
勝丸 スパイの会話術の本質は「相手の心理を理解し、信頼を得ること」にあります。特別な能力ではなく、観察、傾聴、共感という基本の積み重ねです。これらを意識するだけで、対人関係の質は大きく変わり、仕事の成果にも直結していきます。重要なのは、相手に「自分が主体的に話している」と感じさせることです。
(聞き手/程原ケン)

「週刊実話」6月18日号より