「25年間、荒木村重だけを追い続けた」“村重ガチ勢”女性会社員の狂熱人生【死ぬ前にやっておくべきこと】

「信長でも秀吉でもない」17歳女子が“村重沼”に落ちた理由

どうやら来ているのは事実らしいが、そんな世間の再評価にしんのじはよろこびこそすれ左右はされない。自身の思いは25年間、揺るぎない一本柱であった。

その最初の出会いは、17歳の時に購入したプレステの『高2→将軍』というマイナーなゲームだった。

「現代の高校生が戦国時代にタイムスリップして、どう行動するかでシナリオが分岐していくサウンドノベルです。私はそこで、初めて村重に会いました。メインキャラではないけど、チラッと出て来るにはおいしすぎる役回りでして。覇道をいく信長や王道の秀吉よりちょっと渋いところに行きたい、あの年代特有の憧れなんですかね。エピソードもあっさりしてるから、私だけが深掘りしたい…みたいな思いがあったのかもしれません。今思えば、かわいいものですね」

“普通”に甘んじたくないというこの17歳の逆張りが、25年の旅路の始まりだ。情報の少ない村重への思いは募る一方。登場する作品は小説もマンガも映像も限られ、ある程度探せばすぐに打ち止め。大学生になったしんのじは、なければ作るだけと、村重のテキストサイトを作る。だが、ここに来る歴史好きは耳を傾けてはくれるものの踏み込んできてはくれない。結局、一人で壁打ちを続ける孤独な日々が続いた。

「歴史が好きな人でも荒木村重と聞けば『ああ、黒田官兵衛を幽閉した人ね。それしか知らないわ』で終わってしまい、寂しい思いもしましたし、若い頃はこんなに村重のことを好きなのに全然報われないな、という気持ちになることのほうが多かったかもしれません」

たった一人で追い続けた荒木村重の背中。ゆかりの地、伊丹にも足を運んだ。有岡城跡は石碑だけを残し、和菓子屋に「村重まんじゅう」があるだけ。それだけの面影でも、しんのじには十分に楽しめた。

「私は歴史的な資料は積極的に読まないんです。想像の余白があることはずっと一人で村重を考えてきた私にとって大きな救いでした。城跡のそばに大きなイオンがあるんですが、あれだけ大きくて食料も生活物資も揃っていれば村重は一年以上籠城できたとかね。村重は堺で亡くなったと言われているけど、お墓も残っていない。でも、何もないからこそ想像が捗るし余白を楽しめる。だから突然村重を与えられてしまうと、すごい構えてしまうんです」

そんな荒木村重に一度目の波がやってきた。2014年。NHK大河ドラマ『軍師官兵衛』で、その人物が大きく掘り下げられたのだ。
 (後編に続く)

「週刊実話」6月4・11日号より