【深淵ホラー劇場:映画界が封印した『G級の神々』】#8中編 女優から映画製作者へ──ベッカ・ヒラニの劇的な転身と“ファミリー制作体制”の真実

レベッカ・J・マシューズ(ベッカ・ヒラニ)の単独インタビューでは何が語られるのか
4年にわたる取材の末、ついに核心へと迫ったレベッカ・J・マシューズ(ベッカ・ヒラニ)の単独インタビュー。

前編では、飽和するストリーミング市場での生存戦略や、B級ホラー映画の象徴とも言えるモックバスターの裏側が語られた。

続く中編では、彼女が女優から映画製作者へと劇的な転身を遂げた道のりに焦点を当てる。ホラーという刺激的なジャンルを選び、仲間たちと“ファミリー”を築きながら、作品に忍ばせる社会的メッセージと強い責任感に迫る。

■女優から映画製作者へ、創作を心から愛する独学の道のり


女優として主人公を演じるベッカ

ベッカはもともと純粋に演者の道を志していた。キャリア初期の彼女は、カメラの後ろ側で映画をコントロールする制作側の仕事に携わることなど、まったく想定していなかったという。
しかし、あるとき親しい友人が、自分たちの手でオリジナル脚本を書き、主体的に映画を作り上げようというエキサイティングな企画に誘ってくれた。

この経験をきっかけに、彼女は映画をゼロから創り出す製作の魅力に一気にのめり込み、やがては自らメガホンをとって監督までこなすようになっていった。

大作会社の企画やインディーズ映画のオーディションに参加し、誰かから役のオファーが届くのを受動的に待つよりも、自らジャンル映画の製作会社を立ち上げ、出演機会を含めたすべての仕事を能動的に生み出していく。まさに“逆転の発想”によるキャリア形成だった。

「私にとって映画製作は、専門の学校ではなく、実際の撮影現場でがむしゃらに経験を積むという完全な独学の道のりでした。」
「しかし今では、映画に関わるあらゆる分野で働くことを心から本当に楽しんでいます。全体の指揮を執るプロデュース、自らのビジョンを投影する監督、そして物語を紡ぎ直す編集の作業まで、どれもが今では私にとってかけがえのない大好きな仕事になっています」

既存の型にはまらない独創的な方法で映画製作への道を切り拓いてきたベッカは、伝統的な映画界のルールに縛られることなく、自分自身のスタイルで確固たるキャリアを築き上げた。

しかし、彼女が製作や監督として関わる映画の大半が、なぜホラー映画という刺激的なジャンルに集中しているのか。

この点は映画ファンとしても非常に興味深い。その明確な理由として、ベッカ自身が最も愛し、偏愛している映画ジャンルこそがホラーだからだ。彼女はもっと深いホラーの世界で新たな挑戦を続けたいと、熱い意気込みを語る。

「私はイングランドの北部出身であり、同時に有色人種としてのバックグラウンドも持っています。実は、イギリスのホラー映画界全体を見渡しても、有色人種の女性フィルムメーカーは非常に珍しい存在なのです。」

「私は現在、カメラの後ろ側のクリエイターとして活動する際には『レベッカ・J・マシューズ(Rebecca J Matthews)』という名前を使い、カメラの前で出演者として表現する際には『ベッカ・ヒラニ(Becca Hirani)』という名前を明確に使い分けています。」
「ちなみに『ベッキー・フレッチャー(Becky Fletcher)』はキャリア初期にごく短期間だけ使用していた名前で、現在ではほとんど使うことはありません」 

■いつものメンバーが作り出す、信頼に満ちた“我が家”のような撮影現場


信頼に満ちた“我が家”のような撮影現場
ベッカが陣頭指揮を執って製作するホラー映画には、同じ実力派俳優や信頼できる主要スタッフが、作品の垣根を越えて繰り返し参加することが非常に多い。

この徹底したチームメイキングによって、彼女の映画作品群は、まるでベッカを中心に据えた前衛的な劇団のような統一感と高いクオリティを保ち続けている。

ある映画で恐ろしい怪物を演じた俳優が、次の作品では一転して怪物に追われる役を演じるといった、インディーズ映画ならではの遊び心も随所に散りばめられている。

「私たちは強固な映画製作のファミリーとして、同じキャストやスタッフと頻繁にチームを組んで仕事をしています。」

「なぜなら、プロの現場において互いの芸術的な波長がぴったりと合い、人間としても良好な信頼関係を永続的に築けるパートナーを見つけることは、素晴らしい幸運であると同時に、確率としては非常に稀なことだからです。」

「メンバー全員が低予算撮影における現場のスピード感や効率的なチームワークの重要性を深く理解しており、共に現場を重ねるほど、安心感とクリエイティブにおける信頼は揺るぎないものへと高まっていきます」

■ジャンル映画を通した、社会への鋭い眼差しと問題提起

ベッカは映画業界が抱える不公平性といった現実的なテーマを物語の根底に巧みに織り込んでいた
ベッカがかつて取締役を務め、数々の話題作を世に送り出してきたプロポーション・プロダクションズは、現在は惜しまれつつも製作業務を停止している。

しかし同社の初期作品群には、単なる刺激的な描写に終わらない魅力があった。それは、LGBTQをはじめとする多様なアイデンティティを持つ登場人物を積極的に取り入れたり、映画業界が抱える不公平性といった現実的なテーマを物語の根底に巧みに織り込んでいた点だ。

こうした社会的メッセージが、彼女たちのホラー映画を単なる消耗品ではなく、観客の心に残るアートへと昇華させていた。その狙いについて尋ねると、ベッカは確固たる哲学を語ってくれた。

 「はい、おっしゃる通りです。私は映画を製作する上で、常にその部分を最も重視してきました。自分が手掛けるプロジェクトにおいて、ある程度の裁量権と表現の自由が許されているのであれば、社会的に重要なテーマや現代のトピックに光を当てたり、これまでの映画界では十分に描かれてこなかった複雑なバックグラウンドを持つキャラクターを積極的に取り入れるよう全力を尽くしています。」
「これは映画プロデューサーという立場に課せられた大きな責任であると同時に、表現を変革するための最大のチャンスでもあると考えています。私は今後のすべてのプロジェクトにおいて、この信念を貫き通していきたいと強く思っています」

さらに彼女は、自らの未来を見据えて言葉を続けた。

 「新会社であるEMRJエンターテイメントにおいてこれまでにお披露目してきたプロジェクトはすべて、この理念を真摯に、そして妥協なく追求しています。これが私たちの会社の最も重要な使命の一つとなったことを、私は心から誇りに思っています」

ここで語られた新たなるステージ。次章では、世界が注目するEMRJエンターテイメントの全貌へと迫る。

(後編へ続く)

〇EMRJエンターテイメント公式サイト:https://www.emrj-entertainment.com
〇EMRJエンターテイメント公式インスタグラム:https://www.instagram.com/emrjentertainment/
〇ベッカ・ヒラニ公式インスタグラム:https://www.instagram.com/beccahirani/
〇ベッカ・ヒラニ公式フィルモグラフィー(IMDb):https://www.imdb.com/name/nm2467058/

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インタビュー・文/沙さ綺ゆがみ