“5年連続最下位”からの逆襲――増田俊也が『七帝柔道記Ⅲ 湖に星の散るなり』で描いた北海道大学柔道部の執念

『七帝柔道記Ⅲ 湖に星の散るなり』KADOKAWA 1,900円(本体価格)

『七帝柔道記Ⅲ 湖に星の散るなり』KADOKAWA 1,900円(本体価格)著者:増田俊也
ますだ・としなり:1965年愛知県生まれ。2006年『シャトゥーン ヒグマの森』で「このミステリーがすごい!」大賞の優秀賞を受賞しデビュー。’12年『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』で大宅壮一ノンフィクション賞と新潮ドキュメント賞をダブル受賞。

「サラリーマンにこそ読んでほしい」その理由

──本作では北海道大学から新聞社という一般社会へ舞台が移ります。
増田 柔道部を4年で引退した主人公は、北海道大学を中退して北海タイムス社に入社します。柔道衣を脱ぎ、今度は新聞社の編集者として後輩たちを見守る立場になる。現役時代への後悔と、新しい自分への焦燥感――その描写には、これまでの『七帝柔道記』『七帝柔道記Ⅱ』にはなかった手応えがあります。正直、この部分に関しては、過去の2作より自信を持っています。

──後輩たちの悲願の七帝戦優勝にも注目が集まります。
増田 読者にとくに読んでほしいのは、5年連続最下位という泥沼から這い上がっていく北大チームの執念です。これはスポーツ小説でも青春小説でもない。組織小説だと思っています。あらゆる成員がひとつの目標に向かって全力を尽くせば、どんなことでも成し遂げられる。その証明がここにある。日々の仕事に疲れ、出口が見えなくなっているサラリーマンにこそ、読んでほしい一冊です。

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作品に刻まれた“鎮魂”の思い

──読者からは「物語に一気に引き込まれた」「涙が止まらない」という感想が相次いでいます。
増田 最近は軽く読める小説が売れる時代になってきました。それでも読者が一気に引き込まれ、涙が止まらないという感想を寄せてくれるのは、この作品がただの作り物ではないからだと思います。どうしても書かなければならないという熱を持って書いた。その熱が伝わっているのだと思います。サブタイトルの『湖に星の散るなり』からも分かるかもしれませんが、この作品の大きな柱は「夭折」です。若くして逝った後輩たちが生きていたときの輝きを、活字として何としても残したかった。

──辛い出来事があったんですね…。
増田 僕の3期下、九大のキャプテンだった甲斐泰輔君は22歳で、北大のキャプテン吉田寛裕君は24歳で他界しました。彼らが最後に放った、清廉で峻烈な青春をどうしても残したかった。僕自身も命を削る覚悟で書きました。この小説を読めば、どんな境涯の人も人生が変わると思います。それくらいの執念を込めた作品です。

──このⅢの後に続編はあるのでしょうか?
増田 柔道編は今回が最後になりましたが、まだ頑張ります。Ⅳでは中井祐樹がプロシューティング(現・プロ修斗)へ行って失明しながらヒクソン・グレイシーと戦うシーンも出てきます。ぜひ楽しみにしていてください。
(聞き手/程原ケン)

「週刊実話」5月28日号より