「傑作は手作りテーマパーク“アダルト保育園”」廃墟から珍建築まで、“異空間”を追い続ける男の執念

『ふだん着で行ける秘境 ニッポンの異空間』大和書房 1,700円(本体価格)

『ふだん着で行ける秘境 ニッポンの異空間』著者:関口勇
せきぐち・いさむ:『ワンダーJAPON』編集長/武蔵野美術大学 非常勤講師。三才ブックス入社後、2005年に『ワンダーJAPAN』を創刊し、創刊号より編集長を務める。2019年の独立後、2020年にスタンダーズより『ワンダーJAPON』として復刊。人気雑誌となる。

廃墟から珍建築まで――5つの“異空間”カテゴリー

──「異空間」を訪れるきっかけはなんだったのですか?
関口 子どもの頃から好奇心旺盛で、放置されたままの火災現場や変わった形の建物に惹きつけられてきました。そうした不思議な場所を「異空間」として意識的に探し始めたのは、『ワンダーJAPAN』の創刊準備を進めていた頃のことです。ワンダーな場所を紹介する雑誌なら手応えがある、そう確信してこの道を歩み始めました。

──「異空間」を5つに分類していますね。
関口 この本では、わかりやすく異空間を5つに大別しています。ただ、きれいに分類できないものも少なくありません。第一が「廃墟・産業遺産・戦争遺跡」です。放置もしくは最低限のメンテナンスという状況のなか、経年劣化によって朽ちていく構造物が独特の美しさを放っています。第二が「珍スポット」。作り手の中では筋が通っているのでしょうが、外から見るとまるで脈絡がつかめないのがカオスたるゆえんです。第三が「工場・ドボク構造物」。工場は複雑系、ドボクは単純系ですが、どちらも明確な目的のもと一定のルールで構築された独自の世界観があります。第四が「珍寺・珍神社・巨大仏」。大量の奉納物や夢のお告げで生まれた大仏など、人々の信仰心が生み出した非日常のおもしろさが詰まっています。そして第五が「珍建築」。有名建築家の奇抜すぎる発想や、工場とはまた違った複雑で意味不明な形など、専門知識がなくても純粋に楽しめる作品ばかりです。

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“異空間”を訪れるための準備と心得

──特に印象に残っている場所を教えてください。
関口 庭師を引退したおじいちゃんが「男性の活力はエロ」という信念のもと、ひとりで作り上げた手作りテーマパーク「アダルト保育園」が傑作です。中高年男性が園児、壇蜜や藤あや子が保育士さんという設定で、園内のあちこちにエロオヤジギャグが散りばめられています。「スナック オットピン」「だんみつの部屋」など、実に楽しそうに、そしていつ終わるでもなく毎日コツコツと派手に仕上げられていく。その底知れぬ熱量と遊び心、そして一本筋の通った方向性に、思わず感動を覚えます。

──訪れる際の注意点などはありますか?
関口 電波が届かずナビが使えない場所も多いため、地図の事前ダウンロードは欠かせません。強力なライトも必携です。有名観光地、グルメ、温泉などの定番旅は、日常の延長に過ぎません。非日常の震えを求めるなら、まず本書を開いてみてください。
 
(聞き手/程原ケン)

「週刊実話」4月30日号より