団地の片隅で昼飲みの宴 60年続く老舗酒店『伊勢藤』の人情酒場【男がほれる酒と肴「ホの字酒場」】

酒とたばこで会話に花が咲く。


南砂団地の中にある古い酒店の前に、ビール箱でできた簡易椅子。ここを酒場と呼んでいいのか悩ましいが、昼を過ぎると住人が集まり、酒盛りが始まる。

団地の一角にあり、正式名称は『伊勢藤酒店 団地店』。かつて近所に本店があったが、現在営業しているのはこちらだけ。

『伊勢藤』は60年以上この地で営む老舗酒店だ。先代が店を始めたころ、ここは都内屈指のマンモス団地だったという。


「店の前を日本橋行きの都電が走っていた」というから、よほどにぎわったのだろう。「今は安売り店があるし、酒を飲む人も減った」と寂しそうに店主は笑う。

店主の藤田さん。もともとお兄さんと一緒にやっていたが、お兄さんの具合が悪くなり今は一人で切り盛りしている。

やがて都電は廃止され、団地の住人の高齢化も進んだ。スーパーの勢いに勝てず、のれんを下ろした店も多い。

常連は缶ばかり飲むが、生ビール(350円)も。

だが、ここはまだ元気だ。常連の多くが団地の住人で顔見知り。ここに来れば誰かいるから、自然と足が向かうのだろう。

駄菓子をつまみに酒を飲む客も多い。

私も失礼してビールケースの椅子に腰を下ろす。案外座り心地がいいものだ。

店内の冷蔵庫から酒を選び、その場で飲める角打ちスタイル。外にも酒の自販機がある。

缶チューハイを開けながら、前を行き交う人たちに目をやる。若者の目にこの店はどう映っているのだろう。

汗水を流して働き、仕事が終わったら酒を飲む。日本が元気だったころの酒場の面影をそこに見たような気がした。


伊勢藤酒店

東京都江東区南砂2-3-1
03-3649-7722
営業時間:10時~20時
休み:不定休

撮影・文/キンマサタカ

週刊実話2025年10月2・9日号より
※情報は取材当時のものです

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