79歳の偏屈老人と謎の飛行物体…映画『カミング・ホーム』が描く“老後と孤独”

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【やくみつるのシネマ 小言主義 第294回】『カミング・ホーム』
ペンシルベニア州西部の小さな町で暮らす79歳のミルトンは、認知症の初期症状を娘のデニスに心配されながらも、受け入れられずに一人暮らしを続けていた。そんなある晩、ミルトンの庭に正体不明の飛行物体が墜落し、彼の静かな日常は大きく揺らぎ始める。周囲に訴えても相手にされない中、同年代の隣人サンディーとジョイスだけが共に飛行物体を目撃し、秘密を共有することに。それぞれの孤独を抱えていた3人は忘れかけていた人生の喜びを取り戻し、これからの人生と向き合っていく。

誰にでも訪れる老いのリアル

面白かったですねぇ。自分はもちろん、おそらく週刊実話の多くの読者さんが年老いた先に直面する諸問題が、一見、奇抜に見える設定ながら合点がいくストーリーになっています。

なんでもない日常に、突然飛行物体が庭に墜落してくるコミカルな味付けが、お笑いタレントの『バカリズム』が描きそうな脚本だなと思って見ておりました。しかも、それを相当な名優たちが演じることで、ちゃんと深みが出ています。

主人公のミルトンは、79歳の偏屈オヤジ。物忘れが過ぎて、娘から認知症を案じられる段階に差しかかっています。遠からず、その時期を迎える観客にとって、その入り口の映画として意義深いものだという気がします。

翻って、Z世代、アルファ世代と呼ばれている若い人は自分には、もはや宇宙人みたいなものですからね。もちろん、同じ日本語を話しているので、まったく意思疎通が図れないわけではありませんが、「アプリをダウンロードして~」のような話が始まると、途端にお手上げ。自分は「アプリって何?」というレベルですから。もはや、どんな会話もまともにできないはずです。

また、楽しみにしていたWBCさえネットフリックスに加入しないと見られない。こちとら〝ネトフリ〟という単語だけで、もうムリ。どうせ見方も分からないし。幸い、ニッポン放送がラジオでやってくれるので、うちはラジオ一択です。

そういう意味では、映画館ってどんな人にも優しいですね。足を運び、着席さえできれば、大画面で自動的に見せてくれる。考えれば、実にアナクロな媒体。「映画よ、ありがとう」と思います。
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