WBCキューバ代表コーチが入国できず——W杯にも影を落とす米国ビザ問題

W杯にも漂い始めた"不穏な空気"

問題はWBCだけにとどまらない。6月から7月にかけて、米国・カナダ・メキシコの3カ国共催でFIFAワールドカップが開催される。FIFAが見込む来場者は500万から1000万人。史上最大規模の祭典だ。

ビザ制度そのものへの直接的な影響は現時点では限定的だが、すでに不安の声は上がっている。

FIFA前会長のゼップ・ブラッターは自身のSNSで「アメリカには近づくな」と投稿し、米国の入国政策を強く批判した。この発言は欧州で議論を呼び、W杯の安全性や公平性への懸念をさらに広げている。

また、ドイツでは「米国がグリーンランドを領有した場合のW杯ボイコットに賛成」という世論調査で47%が賛成と回答。スポーツの祭典をめぐる政治的緊張は、すでに観客の意識にまで影響を及ぼし始めている。

一方でトランプ大統領はW杯に「300億ドルの経済効果と20万人の雇用創出をもたらす」と豪語し、チケット保有者向けの優先ビザ制度を新設するなど積極的な姿勢も見せている。

経済効果は最大限に享受したい、しかし気に入らない国・人物の入国は認めない——その矛盾が、今回のキューバ問題にも色濃く滲んでいる。

スポーツは政治を超えられるのか

かつてスポーツは「政治を超えた交流の場」とされてきた。冷戦期の米ソ対決、米中の「ピンポン外交」——スポーツが国際関係の扉を開いた例は多い。

しかし今回のキューバ問題は、その前提を静かに揺るがしている。大会の成立を保ちながら、政治的圧力を加えるという「巧妙な線引き」が現実に行われているからだ。

WBCはまもなく開幕する。そして4カ月後には、史上最大規模のW杯が米国の地で始まる。スポーツの舞台に政治がどこまで入り込むのか——その行方を、世界が固唾を飲んで見守っている。