アカデミー賞8部門ノミネート、カンヌ国際映画祭グランプリ受賞!『センチメンタル・バリュー』は父と娘の“消せない傷”を描く衝撃作

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【LiLiCoオススメ肉食シネマ 第325回】『センチメンタル・バリュー』
ノルウェー・オスロで俳優として活躍するノーラ(レナーテ・レインスヴェ)と、夫や息子と穏やかに暮らしている妹のアグネス(インガ・イブスドッテル・リッレオース)。ある日、幼い頃に家族を捨てて以来、音信不通だった映画監督の父・グスタヴ(ステラン・スカルスガルド)が姿を現し、自身にとって15年ぶりとなる新作映画の主演をノーラに打診する。父に対して、今も複雑な感情を抱く彼女は途絶し、ほどなくしてアメリカの人気若手俳優・レイチェル(エル・ファニング)が主演に決定。さらに撮影場所が、かつて家族で暮らした実家であることが分かり、ノーラは激しく動揺する。

再会した父を娘が拒絶

今年は、映画ランキングにさまざまな洋画がたくさん入って1月から嬉しいことがいっぱい。アニメや邦画も本当に素晴らしいけど、海外の映画を通じて、もっと広く世界を見てほしい。

今回は、米アカデミー賞作品賞にもノミネートされているノルウェー・フランス・デンマーク・ドイツ合作の、父と娘の物語です。

映画を見て、こんなにも胸を掴まれることは珍しい。痛かった…。父は娘を愛し、最高の親でいたいと思っていても、娘にとっては嫌な思い出の方が強く残り、心の傷になっています。

俳優として舞台で大活躍するノーラ。そして、映画監督で父のグスタヴ。ノーラと妹のアグネスが小さいときに出て行き、音信不通だったグスタヴから「良い脚本を書いたから主演してほしい」という突然のお願いに、脚本を読むこともなく断るノーラ。仕方なく、グスタヴはアメリカの人気俳優レイチェルに主演を依頼し、本読みや役へのアプローチが丁寧に始まります。

でも、何かしっくりこない。それは、気持ちや言語の問題。アメリカ俳優であるレイチェルがノルウェー語訛りでやった方がいいのでは? など、いろんな工夫をします。グスタヴはレイチェルが主演にピッタリだと言い続けますが、徐々にグスタヴとレイチェルのリズムが合わなくなります。

捨てられた記憶と怒りの再燃

そして作品の舞台が、かつて暮らしていた、ノルウェーの静かな町に堂々とそびえ立つ素晴らしい家であることに怒りを覚えたノーラも黙っていられない。過去はやり直せないし、消すこともできない。家を出て行った父親、そして捨てられた思いのまま、大人になった娘たち…。

本作は、米アカデミー賞作品賞と国際長編映画賞にもノミネートされています。レイチェルを演じるエル・ファニングは助演女優賞。グスタヴを演じたステラン・スカルスガルドは助演男優賞にノミネート。さらに、脚本賞など8部門9ノミネート! カンヌ国際映画祭ではグランプリを受賞しました。

私は、昔からステラン・スカルスガルドの大ファン。長いキャリアで初のオスカーノミネート。息子は『ターザン:REBORN』のアレクサンダー・スカルスガルドと『IT/イット〝それ〟が見えたら、終わり。』のペニーワイズを演じたビル・スカルスガルド。スウェーデンを代表する名優なので、助演男優賞を受賞してほしい!

『センチメンタル・バリュー』
監督:ヨアキム・トリアー
出演:レナーテ・レインスヴェ、ステラン・スカルスガルド、インガ・イブスドッテル・リッレオース、エル・ファニング
配給:NOROSHI ギャガ
2月20日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー

「週刊実話」2月26日号より

LiLiCo(リリコ)

映画コメンテーター。ストックホルム出身、スウェーデン人の父と日本人の母を持つ。18歳で来日、1989年から芸能活動をスタート。TBS『王様のブランチ』、CX『ノンストップ』などにレギュラー出演。ほかにもラジオ、トークショー、声優などマルチに活躍中。