建設不可能と言われた峠、無人施工のトンネル…専門YouTuberが解説する日本の難工事

『ニッポンの土木 執念の難工事』彩図社 1,700円(本体価格)

『ニッポンの土木 執念の難工事』著者:もへじ
長崎県で生まれ、熊本・埼玉・北海道・ロンドンで育ち、国会図書館に住んでいると噂されている交通・土木・廃墟解説系ユーチューバー。趣味は土木や廃墟の探検だと思われがちだが、実は廃墟が大の苦手で、いつも怯えながら撮影している。好きなのは旅行と温泉、ご当地グルメ。

青崩峠トンネルが難工事の理由

──「ニッポンの土木」に興味を持ったきっかけは?
もへじ 父が経済産業省の外郭団体に勤めており、頻繁に海外出張をして帰国のたびに世界各国のインフラ、経済・政治、歴史について語ってくれたことから興味を持ちました。土木系のYouTubeチャンネルを本格化させたのは、登録者がまだ3000人しかいなかったときに、安房峠(岐阜・長野県境)の解説動画が100万回超も再生されたからです。土木関連の解説本は専門性が高すぎて、学者や関係者しか読みません。動画は拡散力も高く、分かりやすく伝えることができると考え発信しています。

──静岡・長野県境の「青崩峠トンネル」は、かなりの難工事だったとか。
もへじ 日本のメーカーが開発した最新の設備を使って工事をしても、トンネルは度々変形し、崩落するほどの難工事でした。まさにNHKの『新プロジェクトX』で紹介するべき偉業だと思います。青崩峠トンネルがなぜ、本来建設不可能といわれた青崩峠の近くに造ることになったのか。それを客観的に、中立な視点で説明するには、日本列島が形成された1億年前から遡る必要があります。ここでは説明しきれないので、詳しくは本書を読んで下さい。

人口減少と技術競争に挑んだ土木の“最前線”

──2023年貫通ですが問題点もあるようですね。
もへじ 主に2点、放置されている問題があります。1つ目は、トンネル本体は完成しているのに、なぜ2年経った今でも道路の開通が未定なのか。2つ目は、トンネルの良い点ばかりが取り上げられて、これまでの経緯について人々の関心が及んでいないことです。青崩峠道路の工事費は、計画当初よりも3.2倍に膨れ上がり、180億円もの税金が使われています。工事の具体的な経緯や進捗についても、国民が政治を動かす民主国家の一員として、しっかりと関心を持つべきではないでしょうか。

──他に印象深い難工事はありますか?
もへじ 本書でも紹介している三遠南信道の一部、飯喬道路6号トンネル(長野)で実施した、「ほぼ完全自動・遠隔操作でのトンネル発破」です。現在、日本が抱えている人口減少、熟練作業員の退職、移民問題、世界との技術開発競争などに真っ正面から向き合った世紀の偉業です。これも青崩峠トンネルの問題点と同じで、もっとメディアが土木の最新技術に注目して、日本のインフラを支えている人々の成果を取り上げてほしいですね。このことを私は広く訴えたいです。
(聞き手/程原ケン)

「週刊実話」2月19日号より