63歳で紅白「究極の大トリ」 松田聖子『青い珊瑚礁』で感じた円熟味

爆発的な声量、動物的に高音が伸びる「第一期」の歌い方

さて、そんな『青い珊瑚礁』です。発売日は’80年の7月1日、まさに「’80年の夏が始まる!」というタイミング。

当時「かわい子ぶりっ子」やら何やらと叩かれ、正当な評価を受けていなかったように思いますが、デビュー曲の『裸足の季節』から、セカンドシングル『青い珊瑚礁』を経て、翌年の『夏の扉』あたりまでの松田聖子のボーカルは本当にすごかった。

「歌が上手い」というより「大きい」「強い」という感じ。岩崎宏美の正当な後継者と言っていい、爆発的な声量、動物的に伸びる高音。

この『青い珊瑚礁』なんて、もう歌い出しの「♪あー(私の恋は)」の声の伸びだけで「恐れ入りました」となります。ちなみに音程は「A」(アー)の音。「♪あー」は「アー」なのです。これ豆知識。

残念ながら松田聖子は、『夏の扉』の次の『白いパラソル』あたりから、声のコンディションを崩し、ウィスパーっぽい新しい歌い方を開発することとなるのでした。

そこに現れたのが作詞家の松本隆で、彼と組んで、大人っぽく女性受けのする「第二期・松田聖子」が始まるのですが、それはまた別の物語。私は、爆発的・動物的な「第一期」をこよなく愛する者です。

なお、紅白での『青い珊瑚礁』は原曲と同じキー(A)。もちろん当時の爆発性・動物性は感じないものの、失われたものを技術で補う円熟味があったように感じます。それは、同じく昨年紅白に出場した岩崎宏美も同様(ただしキーは半音下げ)。

だったら高齢化社会を「円熟味社会」と言い換えていいのではないか――。そんなことを考えながら昨年の大みそか、私は2人の歌声に、耳を澄ませたのでした。

「週刊実話」2月5・12日号より

スージー鈴木/音楽評論家

1966(昭和41)年、大阪府東大阪市出身。『9の音粋』(BAYFM)月曜パーソナリティーを務めるほか、『桑田佳祐論』(新潮新書)、『大人のブルーハーツ』(廣済堂出版)、『沢田研二の音楽を聴く1980―1985』(講談社)など著書多数。