さらば“ひふみん”! 加藤一二三九段が肺炎で死去。将棋界の至宝が遺した不滅の足跡と矜持

最善を追い求めた稀代の棋士

晩年は「ひふみん」と呼ばれてバラエティー番組にも引っ張りだこになり、天真爛漫な笑顔でお茶の間を和ませた。

だが、その精神の拠り所は極めて厳格であった。敬虔なカトリック信徒であり、ヨハネ・パウロ2世から勲章を授与されたこともあった彼は、対局中も常に神の加護を信じ、自らの才能を磨き続けることを「主への義務」と考えていた。

2017年の引退会見で藤井聡太という“新たな天才”の出現を喜び、温かく見守り続けた姿は、次世代へバトンを繋ぐ賢者のようでもあった。

加藤一二三という男が遺したのは、単なる勝敗の記録ではない。どんなに苦しい局面でも信念を曲げず最善を追い求める尊さだった。

真っ直ぐに、そして力強く盤と向き合い続けた稀代の棋士――その足跡は、これからも将棋を愛する人々の心の中に生き続けるに違いない。