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『銭湯 文化的大解剖! まちのお風呂屋さん探訪』(神戸新聞総合出版センター/1980円)~本好きのリビドー/昇天の1冊

『銭湯 文化的大解剖! まちのお風呂屋さん探訪』(神戸新聞総合出版センター/1980円)~本好きのリビドー/昇天の1冊 
『銭湯 文化的大解剖! まちのお風呂屋さん探訪』(神戸新聞総合出版センター/1980円) 

コロナ禍でも、銭湯はストレスを発散できる憩いの場として営業を続けている。今回は関西の銭湯のウンチクや楽しみ方をまとめた1冊『銭湯 文化的大解剖! まちのお風呂屋さん探訪』(神戸新聞総合出版センター/1980円)を紹介。

単なるガイド本ではない。マニアたちが解説したディープな本だ。例えば電気風呂。浴槽に低周波電流を流して身体を刺激する。入ったことがあるという読者も多いだろうが、実は関西で特に普及している。

東京の銭湯ではあまり見かけないが、なんでも京都市北区にある船岡温泉が電気風呂発祥の地であることから関西一円に広がったなど、意外と知らない歴史があった。

しっかりと生活に溶け込んでいる銭湯

また、「ゆ」の文字が入ったのれんも東京と関西では違いがあるとか。浴槽の位置も、一番奥にあるのが東京、浴室の中央に配置している関西など、特徴が異なる。こうした文化の相違に戸惑う客も珍しくない。

他にも、靴を入れる下足箱の鍵にも種類がある、排水溝の蓋で銭湯を造った工務店が分かるなど、とても詳細。極めつけは、銭湯へ通う人々へのインタビュー。そろって皆、楽しそうにその魅力を語る。風呂屋がしっかりと生活に溶け込んでいることが伝わってくる。

著者は関西の銭湯の応援活動に熱心な『おしどり浴場組合』。愛好家のグループである。巻末にはメンバー各自のイチ押し風呂の紹介もズラリと並び、最後までリラックスして読むことができる。

(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)