井岡一翔“大晦日決戦”に賛否噴出──WBA挑戦者決定戦の舞台裏と「5階級制覇の評価」を再検証

実は“技巧派で侮れない”オルドスゴイッティの実像

ただし、「格下」という言葉が独り歩きしているのも事実だ。オルドスゴイッティは堅実なフットワークと的確な右ストレートを武器にする技巧派。軽量級らしい細かいステップワークと、リズムを狂わせるしつこいジャブが特徴で、決して雑なボクサーではない。

一方の井岡は、コンパクトなジャブ」「タイミングの良い右カウンター」「代名詞ともいえる左ボディ」でペースを握るタイプ。序盤は相手を観察し、中盤から削りに入るスタイルはバンタム級でも十分に通用するだろう。

では勝負のポイントはどこか――それは「井岡がどれだけ早く相手のリズムをつかめるか」に尽きる。オルドスゴイッティの細かいジャブをもらうと、自分の距離を作れず、得意のカウンターや左ボディが生きてこない。序盤で主導権を握れるかどうかが、試合全体の流れを左右する。

“当日昇格”の可能性と「出来レース」論──制度の曖昧さが議論を呼ぶ

もう一つ議論の火種となっているのが、当日昇格で世界戦に変わる可能性だ。WBAは王座の動き次第で、挑戦者決定戦をそのまま王座決定戦へ格上げするケースがある。

この制度があるため、一部メディアやSNSでは、「大晦日の興行に向けて用意されたシナリオでは?」「井岡を“5階級制覇させる流れ”ができている」といった指摘(あくまで外部の声)も見られる。

もちろん事実は不明で、井岡がリングで実力を証明してきた実績は揺るがない。しかしボクシング界に昔から存在する“ベルトの乱立”や制度の甘さが、今回も議論を招いているのは確かだ。

ただし、こうした憶測がある一方で、井岡の調整ぶりは良好との声もある。コンディションの波もなく、練習内容も充実していると聞こえてくる。“5階級制覇”という重い目標に向けた覚悟は、揺らぐどころかむしろ研ぎ澄まされている印象だ。