【難読漢字よもやま話】「犇めく」なんて読む? 言葉にまつわる由来と豆知識


人が犇めく大都会

正解は「ひしめく」です。

【犇めくの語源と漢字の由来】
「犇めく(ひしめく)」は、大勢の人が込み合って騒ぐ、または多くのものがぎっしりと集まっている状態を意味します。

漢字の「犇」は、「牛(うし)」という字が三つ集まった会意文字(複数の文字を組み合わせた字)であり、このような同じ文字が三つ組み合わされた漢字を「品字様(ひんじよう)」と呼びます。

「牛」が三つ集まることで、多くの牛が一箇所に押し合い、群れて騒々しい声を出している様子、すなわち「犇く(ひしめく)」状態を表すようになりました。

和語の「ひしめく」の語源は、「ひしむ」(押しつぶす、密集する)が反復された「ひしめく」であり、すき間なく密集している様子や、それに伴う騒々しさを表します。

【牛3頭分の圧!犇めくのトリビア】
●珍しい「品字様」
「犇」は、同じ文字を三つ重ねて新しい意味を作る「品字様」の漢字の代表例です。「轟(ごう)」(車輪の音)や「晶(しょう)」などもこの仲間です。

●音と密度の両方を表現
「ひしめく」は、「密集している」という視覚的な状態だけでなく、それに伴う「騒々しい」という聴覚的な状態も同時に表現できる特徴があります。

●「群がる」との違い
「群がる」は単に集まることを指しますが、「犇めく」はすき間なく押し合い、動いているという、より密度が高く、活発な動きを伴うニュアンスが強いです。

●「牛」が集まる意味
なぜ牛が選ばれたかというと、牛は群れで移動する際、体が大きく、互いに押し合い、蹄の音や鳴き声で騒がしくなる様子がこの語のイメージに合致したためです。

●群衆の熱気を描写
文学作品などでは、祭りやデモなどで人々が熱狂し、体温と声がぶつかり合うような活気あふれる群衆の熱気を表現する際に効果的に用いられます。

●対義語は「閑散」
「犇めく」が極度の混雑を意味するため、その対義語は「閑散(かんさん)」「寂寥(せきりょう)」など、人が少なく静まり返っている状態を示す言葉です。