【難読漢字よもやま話】「鱠」なんて読む? 言葉にまつわる由来と豆知識


お正月料理の定番!
正解は「なます」です。

【鱠の語源と漢字の由来】
「鱠(なます)」は、魚介類や獣肉、野菜などを細く切って、酢などの調味料で和えた日本の伝統的な料理を指します。

漢字の「鱠」は、「魚へん」に「会(かい)」が組み合わさった形声文字で、もともとは「新鮮な生肉を細切りにした料理」を意味しました。

特に中国では、新鮮な魚や肉を細切りにした「膾(なます)」という料理が古くから存在し、日本にその文化が伝わりました。 

和語の「なます」の語源は、「生(なま)の食材を混ぜる」、あるいは「生のものに酢をかける」という動作に由来するという説が有力です。日本では、酢で和えることが特徴的な料理として定着しました。

【正月料理の定番! 鱠のトリビア】
●「膾」と「鱠」の違い
漢字には「膾(なます)」と「鱠(なます)」の二種類があります。「膾」は獣肉や野菜を使ったもの、「鱠」は魚介類を使ったものを指し、日本では両方を含む料理法全体を「なます」と呼びます。

●料理法のルーツ
なますの調理法は、古代中国で生肉や生魚を細切りにして食べる食文化がルーツとされ、奈良時代以前に日本に伝来しました。当時は高級な料理でした。

●「酢和え」との境界線
現代では、細切りにした食材を酢で和える料理を総称してなますと呼び、特に大根と人参を細切りにしたものが一般的ですが、「酢の物」の一種として分類されます。

●「紅白なます」の縁起
正月に食べる「紅白なます」は、紅白の色合いが水引(みずひき)を連想させ、祝いの席にふさわしい縁起物とされています。平和と喜びを願う意味が込められています。

●「膾に切る」という慣用句
「膾(なます)に切る」という慣用句は、「細かく切り刻む」という意味で、転じて「無残に殺害する」という凄惨な比喩として使われます。これは元の調理法に由来します。

●保存食としての役割
昔の日本では、酢は非常に重要な防腐剤であり、なますは新鮮な魚介類を酢で和えることで、調理後も日持ちさせるという保存食としての役割も持っていました。

●外国の類似料理
なますと類似した料理は世界中にあり、例えば南米の「セビーチェ(Ceviche)」は魚介類を柑橘系の酸味でマリネする料理で、原理が近いです。

●栄養価
なますは、生野菜や魚介類からビタミンやミネラルが摂取できるほか、酢には疲労回復効果があるため、健康的な副菜としても優れています。