【難読漢字よもやま話】「鯏」なんて読む? 言葉にまつわる由来と豆知識


正解は「あさり」

【鯏の語源と漢字の由来】
「鯏(あさり)」は、マルスダレガイ科に属する二枚貝の一種で、日本各地の砂浜や干潟に広く生息しています。

漢字の「鯏」は、「魚へん」に「利(り)」が組み合わさった形声文字ですが、魚へんは古代中国で魚介類全般を指す部首として用いられました。

「利」は、「土を掘り起こす」という意味を持つことから、砂に埋もれて生息し、漁る際に掘り起こす必要があった生態にちなんで名付けられたという説があります。

和語の「あさり」の語源は、「漁(あさ)る」、つまり漁獲する、探して集めるという動詞から来ています。これは、手軽に浜辺で掘って採集できることから、「漁り貝(あさりがい)」と呼ばれたことが変化したためとされています。

【庶民の味方! 鯏のトリビア】
●潮干狩りの主役
あさりは、潮の満ち引きによって干潟が広がる際に、誰でも簡単に採集できるため、潮干狩りにおける最も人気のある対象の一つであり、日本の春の風物詩となっています。

●貝殻の模様は多様
あさりの貝殻の模様や色は、生息する環境(水温や砂の質)によって大きく異なり、縞模様や波模様、茶色、灰色など、一つとして同じものがないと言われます。

●栄養素の宝庫
あさりは特に鉄分、亜鉛、ビタミンB12などのミネラルや栄養素を豊富に含んでおり、貧血予防や疲労回復に効果があるとされる栄養価の高い食材です。

●「砂抜き」の重要性
あさりの調理には、体内に残った砂を吐かせる「砂抜き」が欠かせません。これは、あさりを海水程度の塩水に浸し、暗い場所に置くことで行われます。
みそ汁は朝食の定番

●「大和蜆(やまとしじみ)」との見分け
同じ二枚貝の仲間である「しじみ」とは、生息場所で区別されます。あさりは汽水域(海水と淡水が混ざる場所)から内湾の海水域に生息します。

●「潮汁」と「酒蒸し」
あさりは、その濃厚な旨味成分から、素材の味を活かした潮汁(うしおじる)や酒蒸しとして調理されることが日本では一般的です。

●環境の変化に強い
あさりは、海水温や塩分濃度の変化に比較的強い耐性を持つため、汚染が進んだ環境や汽水域などでも生息しやすいという特徴があります。

●大量死の発生
ただし、近年は水温の上昇や環境の変化により、あさりの稚貝の大量死が各地で問題となっており、漁獲量の減少と環境保全が課題となっています。