『生き直す 私は一人ではない』著者:高知東生~話題の1冊☆著者インタビュー

『生き直す 私は一人ではない』青志社/本体価格1400円

高知東生(たかち・のぼる) 1964年高知県生まれ。93年に芸能界デビューし、俳優として映画やドラマで活躍。99年に女優・高島礼子と結婚。16年に覚醒剤と大麻の所持容疑で逮捕。同年に離婚。現在、薬物依存の専門病院や自助グループに関わりながら、依存症問題の啓発活動に取り組んでいる。
――本書は高知さんの波乱万丈の人生と、薬物依存回復に取り組む心境がつづられています。本を書こうとしたきっかけは何だったのですか?

高知 薬物で逮捕された時は絶望しかありませんでした。一時は死を考えたこともあります。そんな時に知り合ったのが『公益社団法人・ギャンブル依存症問題を考える会』代表の田中紀子さんでした。田中さんに薦められ〝自助グループ〟に参加してみると、他にも依存症で苦しんでいる人がたくさんいることが分かりました。

今まで僕は自分の悲しみや寂しさを隠して生きてきましたが、思い切って胸の内を話してみると、みるみる気持ちが楽になったのです。その時初めて、素直に〝もっと足を運びたい〟と思いました。

そして、自分自身の過去に向き合い、正直な気持ちをセミナーなどで話すようになると、意外なことに、参加してくださった方が口々に「気が楽になった」「心が救われた」とおしゃってくれたのです。そんな時に、ツイッターがきっかけで、出版社から書籍化のオファーがありました。僕にとってこれからの人生のためのケジメ、過去の落とし前のつもりで筆をとりました。

高知東生「誰にも“生きる権利”があることを知ってほしい」

――そもそもなぜ薬物に手を出してしまったのですか?

高知 僕は父親が任侠で、母親は育児放棄し、最後は自死するなど、家庭の愛情を知らずに育ちました。そんな田舎生活から抜け出し、都会で成功したいと、ホストやAV業界でがむしゃらに働きました。

しかし、気が付けば金、女、酒、車とバブリーな生活に溺れ、いつの間にか薬物に手を染めていました。特殊な環境に育ったこともあるからでしょう。当時は罪の意識など全くありませんでしたね。

――元TOKIO・山口達也容疑者へのツイートが大きな話題になりましたね。

高知 自分も晒し者にされ、叩かれたので彼の気持ちは痛いほど分かります。でも、彼には〝生きる権利〟があることを知ってほしい。絶望から希望に向けて再起を目指している人がいっぱいいるんです。自分も周囲に助けられ、支えられてきました。今度は僕が恩返しをする番なのです。

――今後の活動予定はありますか?

高知 簡単に芸能界に戻れるほど世間は甘くありません。ありのままの自分を見せて、必要とされる所で仕事をしていきたいと思っています。もう以前のように高い目標を持つのはやめました。自分に素直に、身の丈にあった人生を送りたいと思っています。

(聞き手/程原ケン)