「牛肉豆腐」が名物の老舗やきとん店 池袋『千登利』

「うちの店の財産はお客さんです」と胸を張る店主は3代目だが、先代との血縁関係はない。「だから創業当時の話を常連さんから聞くのは楽しいですね」とのこと。

埼玉から都心へ、都心から埼玉へ向かう人が交差する池袋は、常に混雑している。

若者は肩で風を切り、客引きはしつこく、酔っぱらいと肩がぶつかりそうになるたび、心の中でため息をつく。

そんな池袋駅西口の中心『ロサ会館』横にある『千登利』は、昭和24年創業の老舗だ。

騒々しい繁華街の中で、行儀よくカウンターに座ったおやじがグラスを傾ける様子は、文字通り安息の地といえよう。

ほとんどの客が頼むのは名物の牛肉豆腐。

牛肉豆腐(650円)。すき焼きをイメージしてじっくり煮込んだ豆腐は見事な茶色。大きさはほぼ一丁分とボリュームあり。ビールの大瓶は700円。

たっぷり乗せられたネギを、茶色のつゆに浸す。辛いネギと甘じょっぱいつゆ。これだけで立派なつまみになる。

牛肉豆腐の大鍋。店には老舗特有の厳しいルールも無いので若者も入りやすい。

ネギの下にある肉を丁寧にほぐして一口。豆腐を少し崩してもう一口。それをビールで流し込む。

定番のねぎぬた(490円)。

最後に残ったつゆも忘れずに。固い椅子にお尻がなじんできたころ、ビールは日本酒に変わるだろう。

やきとんも名物。一串160円から。

街の喧騒(けんそう)から扉で隔てられた店内は、まるで異世界のようだ。髪の毛が真っ白になった客たちは、若い頃からこの場所を大事に守ってきた。

野菜の串も多数。

だから、『千登利』には静かな秩序がある。この店のおかげで池袋が好きになれそうだ。

千登利

東京都豊島区西池袋1-37-15
03-3971-6781
営業時間:16時~23時(日曜~22時)
休み=月曜

撮影・文/キンマサタカ

「週刊実話」2025年6月12日号より
※情報は取材当時のものです

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