金井夕子の『パステルラヴ』はヒットしなかったが「令和になっても細く長く愛される名曲」

令和に聴いても“ニュー”なミュージック

そんな尾崎亜美によるメロディーは実に新鮮。「♪愛しているの 愛しているの あなたのそばを離れない」のくだりは、当時歌番組で見て聴いて「あぁニューなミュージックが歌謡界に押し寄せてきているな」と感じましたよ。

シングル盤の歌詞カードには楽譜が載っているのですが、「♭9」やいわゆる「分数コード」の入ったコード進行も実にニュー。

さらに、前年のレコード大賞に輝く沢田研二『勝手にしやがれ』で一気に名を上げた船山基紀による編曲もまたおニューで、そしてナウ(死語)。特にイントロのキラキラしたピアノの響きは、一度聴いたら忘れられません。

そういえば、同じくこの年にスタ誕からデビューした石野真子のデビュー曲『狼なんか怖くない』の作曲は吉田拓郎。前回取り上げた渡辺プロダクション同様、スタ誕もフォーク~ニューミュージックの取り込みモードに入っていたのでした。

そんな『パステルラヴ』、正直、成功したとは言い難い1曲です。でも、ヒット曲ではなかった分、名曲として細く長く愛され、今でもたまにラジオでかかったりします。もちろん私も自分の番組でもかけました。

そして私は、令和に聴く『パステルラヴ』に思うのです。

「あれから47年経っても、まだまだニューやなぁ…」

「週刊実話」12月4・11日号より

スージー鈴木/音楽評論家

1966(昭和41)年、大阪府東大阪市出身。『9の音粋』(BAYFM)月曜パーソナリティーを務めるほか、『桑田佳祐論』(新潮新書)、『大人のブルーハーツ』(廣済堂出版)、『沢田研二の音楽を聴く1980―1985』(講談社)など著書多数。