味が染みこんだおでん&日本酒(だし割)に舌鼓 旗の台『かね久』 

店は旗の台駅前の商店街にある。
雰囲気のいい店構えのおでん屋があった。入ったら意外と若い店主が立っているから、少し拍子抜けする。息子が後を継いだのだろうと思ったら違った。

「元々、店の常連だったんです」

以前は居酒屋の店長をしていたという店主は手際がいい。

聞けば後継者を探していた先代に見込まれて店を任されたという。だから古い客のために、店の雰囲気を壊さないよう心がけているという。

店を継いでから始めたという焼き鳥も人気。一串220円~。

おでんの鍋からあれこれ選ぶ。おまかせもできるが、どうせなら自分で選びたい。どれもうまい。

コンビニのおでんが終わると、テークアウトを求める客が増えるという。

ビールで喉を潤したら、次はおでんのだし割を頼む。これは下町ではふぐのひれ酒より重宝される酒である。

うまいし安いし、店によって味が異なる。出し割にする酒は上等でないほうがいい。そのほうがだしのうまみを感じられる。
玉子、しいたけ、だいこん、ふき(各100円)。がんも(200円)、紅ショウガ天(300円)のおでん。日本酒のだし割(500円)は相性ピッタリ。

しかし、おでんというのはよくできたつまみだと思う。酒は進むし、腹にもたまる。からしを多めにつけたら酔いも覚める。

この日の東京は夏日を記録が、半袖で食べるおでんもうまいものだと思った。
一番人気のだし巻きは「たくさん油を使うことがおいしくなるコツです」とのこと。
若い客が少し緊張気味に入ってきた。街のおでんやにふらっと入るなんて勇気がある若者である。きっと立派な酒飲みになることだろう。

『かね久』

東京都品川区旗の台4-7-3
050-5262-4778
営業時間:17時~22時
休み:日曜

撮影・文/キンマサタカ

「週刊実話」2025年6月5日号より
※情報は取材当時のものです

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