高市早苗内閣、支持率82%でも解散は「今じゃない」? 早期断行を阻む公明離脱と維新の火種

高市早苗(C)週刊実話Web
74%(日経新聞)、82%(JNN)。これらの数値は何か。発足したばかりの高市早苗内閣の支持率だ。

2001年以降に発足した直後の内閣で“82%”は、小泉純一郎内閣に次ぐ高支持率だ。自民党内では「今、衆院解散すれば少数与党から単独政権奪取も可能だ。一気にやるべき」の解散風が吹き始めた。

高市首相は11月5日の衆院本会議の代表質問で、国民民主党の玉木雄一郎代表から解散の有無を問われると「今は、解散について考えている余裕はございません」と否定したが、最大野党の立憲民主党・野田佳彦代表は「衝動に駆られる可能性はある」と警戒感を強めている。

選挙プランナーは「即解散は自民党には厳しいのでは」とみて、こう続ける。

「高支持率はトランプ米大統領、中国の習近平国家主席と初首脳会談した高市首相への評価でしょう。また、女性初の総理大臣、積極財政への期待なども高支持率につながったとみられます。
だが、これは政策実行の手腕ではない。高支持率を鵜呑みにして解散すると、とんでもないしっぺ返しを受ける危険性があります」

同プランナーによれば、主な理由は3つあるという。

1つ目は自民党の支持率が回復していない点。 冒頭の74%は、9月に行われた石破茂内閣の支持率37%から2倍に急伸している。ただ、自民支持率は36%。これは昨年の石破内閣発足当時の自民党支持率41%より低いのだ。

「参政党や国民民主などへ流れた自民保守層が高市政権でまだ回帰していないと同時に、石破政権を支持した中道層が逃げて行ったのではないか」(同)

【関連】高市内閣“支持率70%”に唖然 公明党連立離脱と創価学会「存亡の危機」

公明離脱の痛手と維新を巡る暗雲

2つ目は公明党の連立離脱の痛手だ。 共同通信は創価学会を支持母体とする公明党の連立離脱直後、自民党に回っていた“学会票”を失ったとして試算。

衆院1小選挙区で学会票は1〜2万あるとされる。その結果、自民は首都圏を中心に昨年衆院選から29議席減らし比較第1党から転落すると予想する。

「選挙区で当選してきた自民議員と落選の次点候補との差が1万票以内の場合、逆転はすぐ起きます。
昨年の衆院選に照らし合わせると、レッドゾーンには閣僚クラスもいる。国家公安委員長の赤間二郎氏、環境相の石原宏高氏らは次点と7000票前後の差。
著名どころでは安倍晋三元首相の甥っ子である山口2区の岸信千世氏は次点候補と1724票の僅差だった」(同)

次点候補と2万票以内の自民議員らを加えると、危険水域の自民議員は50議席前後にまで拡大する。

「公明党の斉藤鉄夫代表が次の選挙で立民との共闘も匂わせています。当落線上の自民議員らの本音は、早期解散絶対阻止でしょう」(政界関係者)

3つ目は連立を組む日本維新の会を巡る暗雲。 維新の藤田文武共同代表の公設秘書が代表を務める会社に対し、印刷費などの名目で旧文通費等から約2000万円を支払っていた件だ。

『しんぶん赤旗』は公金還流疑惑として報じた。藤田氏は「法的問題は一切ない」としているが、維新創業者の橋下徹氏は“公金マネロン”として藤田氏を激しく批判している。

「橋下氏と維新の藤田派は以前から全く反りが合わない。“公金マネロン”発覚をこれ幸いと、藤田氏追い落としに出たともっぱら。だが、国民の目には維新の内紛としか映らない。
藤田氏の件に関しては、維新代表兼大阪府知事の吉村洋文氏の歯切れも悪い。連立を組む高市政権に間違いなく悪影響を及ぼすはず」(政治担当記者)

これら3点、自民党の支持率が回復していないのも、公明党が連立離脱したのも、藤田氏の件も根源にあるのは、すべて「政治とカネ」問題だ。

「旧安倍派らの裏金不記載議員が副大臣などに起用された。佐藤啓参院議員の官房副長官就任も野党が激しく追及し、火の手がジワリと拡大しつつある」(同)

高市内閣の高支持率は、ひとえに高市首相によるところが大きい。 「しかし、内閣支持率はいつ、急降下するか分からない。水物です」 自民党幹部はこう指摘する。

歴代最高内閣支持率(85%、毎日新聞)で発足した小泉内閣は’02年1月まで70%台だったが、翌2月には40%台に急降下。背景は当時の田中真紀子外相を更迭したため。真紀子氏の涙を流す映像が小泉内閣を直撃し政権を脅かしたのだ。

「高市内閣も閣僚不祥事が持ち上がれば、一気に身動きが取れなくなる。ましてや物価高対策は最優先課題です。即、効果が出なければ、支持率は一気に急落するでしょう。その前に伝家の宝刀を抜く衆院解散が最良の策」(同)

では、解散タイミングはいつか。

「解散は年末か、来年1月の通常国会冒頭が1つのタイミング。次は来年度予算が成立する見通しの3月末。年末は日程的に厳しいというが、’14年には安倍元首相が意表を突く12月14日投開票の『アベノミクス解散』で自民党は291議席と大勝した」(前出・政治担当記者)

政策や政権運営が行き詰まってからの解散では手遅れというのが、永田町界隈の共通認識だ。

「キングメーカーとなった麻生太郎党副総裁の腹一つでしょう。党三役の幹事長と総務会長を麻生派で占めている。麻生氏は公明嫌いで早期解算論者として知られています」(同)

自民党内の解散攻防戦は激しさを増している。

「週刊実話」11月27日号より