蝶野正洋が政治家に喝!「言いたいことだけを言うヤジは三流」

「声を出すなら周りを納得させて、流れをつくる意識がないとダメ」

先日、メジャー・リーグのワールドシリーズでブルージェイズ本拠地のトロント(カナダ・オンタリオ州の州都)で試合が行われたとき、観客からドジャースの大谷翔平選手に対して大きなブーイングが飛んでいたけど、このブーイングは対決を盛り上げる役割がある。

あと、アメリカではお客さんも積極的に声を出して、能動的にイベントを楽しむ意識も強いんだよ。

それにブーイングというのは、その選手に対する一種のリスペクトでもある。大谷選手のブーイングは、「お前、強すぎるぞ」という意味だからね。

アメリカのプロレスで本当に試合がしょっぱいとき、観客はブーイングじゃなく「boring(つまらない、退屈という意味)」と言い始める。

「退屈だ!」「つまらねぇぞ!」と声を上げて、お客さんが選手にダメ出しをするんだよ。これが始まると選手もやりにくい。会場のムードが一気に悪くなるからね。

とはいえ、誰も声を出さないのも盛り上がらない。そういうときは、試合をしていない選手らに役割があって、リング上の選手が苦しそうなときに「頑張れ!」「返せ!」などと声をかけて、試合のムードを伝える。

他にも「ハシモト!」とあえて名前を出すと、初めてプロレスを見に来たお客さんも「あれが橋本選手なんだな」と気づいてくれる。

エプロンをバンバン叩いてエールを送るのも、お客さんの拍手するタイミングを作ってる。いわば応援団長というか、お客さんが声を出す呼び水になるということだね。

だから、自分が言いたいことだけを言うヤジは三流なんだよ。

声を出すなら周りを納得させて、流れをつくる意識がないとダメ。もしそのタイミングが分からない政治家がいるなら、俺に声をかけてくれ。そしたらいつでも「正しいヤジのやり方教室」を開いてやるよ。

「週刊実話」11月27日号より

蝶野正洋(ちょうの・まさひろ)

1963年シアトル生まれ。84年に新日本プロレス入団。「nWo JAPAN」を率いるなど“黒のカリスマ”として活躍し、2010年に退団。現在はプロレス関係の他に、テレビやイベントに出演するタレント活動、「救急救命」「地域防災」などの啓発活動にも力を入れる。