女性初のエベレスト登頂映画は80歳の今も銀幕に挑む大女優・吉永小百合の演技に注目!

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【やくみつるのシネマ  小言主義 第287回】『てっぺんの向こうにあなたがいる』
1975年、世界最高峰エベレストの女性世界初登頂に成功した多部純子(吉永小百合)。女性登山家のパイオニアとして世界中から注目を浴び、純子自身や友人、家族たちに光を与えたが、それと同時に息子・真太郎とのすれ違いや登山仲間との決別に悩み、病にも襲われる。晩年には闘病生活を送りながら、余命宣告を受けた後もなお、「苦しい時こそ笑う」と家族や友人、周囲をその朗らかな笑顔で巻き込みながら、人生をかけて山へ挑み続け…。

晩年の吉永小百合の代表作に

女性初のエベレスト登頂から50年、登山家・田部井淳子さんの半生を描いた本作。余命宣告を受け、病床にある晩年までを演じきった吉永小百合の代表作になり得る映画だと思います。

天国の田部井さんも、まさか吉永さんが自分を演じてくれるとはと、キャッキャ喜んでいるんじゃないでしょうか。ご本人も相当にポジティブな方のようだったので、いつまでも若々しく、80歳になる今も挑戦し続けている吉永さんは適役なんだろうなと。

物語では、輝かしい偉業や、夫が妻を支え続けた理想の夫婦像という光の反対側にある「影の部分」も丁寧に描かれています。

1人だけ脚光を浴びてしまったことから生まれた仲間との軋轢。世界的登山家の息子として注目され続け、苦しむ息子とのきしみ。人の心が離れていく葛藤の日々がリアルに描かれたことで、彼女の人生に深く感情移入できます。

しかも時系列に語られるのではなく、のんが演じる青年期がクロスして出てくる、とても上手な構成で、見る者を飽きさせません。

エベレスト登頂のシーンも日本国内で撮影しているようですが、木下グループ提供ならネパールに行ってロケしているんじゃないかと思うくらい、巧みなカメラワークでしたね。

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