【難読漢字よもやま話】「貶す」なんて読む? 言葉にまつわる由来と豆知識


正解は「けなす」

【漢字の由来と語源】
「貶す(けなす)」の語源は、古語の「けつ(貶)」に由来します。「けつ」は、欠点や悪いところを指摘する、価値を下げるという意味を持っていました。この「けつ」に動詞化の接尾語「す」がついたものが「貶す」となり、現代まで使われています。

また、一説には「けがす(汚す・穢す)」+「なす(為す・成す)」が変化したとの説もあります。「けがす」は「汚れる状態にする」「名誉を損なう」という意味があり、「なす」(為す・成す)は「~の状態にする」「~を行う」という動詞です。

漢字に関しては「貶」を構成する「乏」は、不足している、乏しいという意味を表します。「貝」は、古代において貨幣として使われていた貝殻を表し、価値や財産に関わる意味をなし、これらを組み合わせることで、「価値が乏しくなる」「価値を下げる」、「けなす」という言葉の意味に繋がっています。

人をけなす悪口は不思議とよく聞こえる

【けなすに関するトリビア】
●類語の豊富さ
日本語には「けなす」と似た意味を持つ言葉が多数存在します。「貶(けな)す」「謗(そし)る」「悪口を言う」「中傷する」「こき下ろす」など、ニュアンスや程度によって使い分けられます。

●他人をけなす心理的な背景
相手をけなす行為の背景には、自分の優位性を誇示したい「マウンティング」の心理、自身の自己肯定感の低さの裏返し、嫉妬、ストレス発散など、さまざまな心理が隠されていることがあります。

●笑いやユーモアへの活用
落語の登場人物のやりとり、漫才のツッコミ、テレビ番組の毒舌キャラなど、お笑いやエンターテイメントの世界では「けなす」表現が、笑いやユーモアを生み出す重要な要素として巧みに活用される場面が少なくありません。

●近年はネットに急増中
インターネットやSNSの普及により、匿名性を利用した誹謗中傷や「けなし」の言葉が拡散しやすくなっています。

●「褒め殺し」は究極のけなし行為?
意図的に相手を過剰に褒め称えることで、かえって相手を窮地に陥れたり、遠回しに皮肉を込めてけなしたりする行為を「褒め殺し」と呼びます。これは「けなす」行為が逆説的な形で現れたものと言えます。