還暦を迎えた“せんべろ”の老舗 堀切菖蒲園『きよし』

メニューは200~300円台を中心に、新しい物もドンドン増えている。これでも少し値上げしたというから驚きだ。
店ができて60年というから『きよし』は老舗に分類されるだろう。

だが、15年ほど前に移転したこともあり、初心者でも入りやすい雰囲気を持つ。だから私のような一見客が気軽に入ってくる。

壁一面に掛かった年季の入ったメニューがかすれて読めず一瞬ひるむが、「そっちは気にしないでいいから」と女性店主が笑う。

オープンは60年前。 年季の入った短冊は店の歴史を知る。
指さされた白板に黒いマジックで書かれているのは、200円台を中心としたメニューで、のんべえの新聖地と目される堀切菖蒲園においても、安さは群を抜いている。
チリビーンズ280円。人気のチリビーンズはクラッカー付き。ハイボールとの相性も抜群だ。
昨今の物価高で「せんべろ」という言葉は死語になったと思ったが、この店ではまだまだ健在のようだ。
納豆オムレツ(280円)はきれいな仕上がり。
注文が入ると店主は厨房で調理を始める。その間、カウンターで酔客の相手をするのは3代目にあたる小学生の娘だ。大人びた口調で飲み過ぎをたしなめているさまは将来有望である。
祖母、母(写真)、子供の親子3代で店を切り盛り。
そのかいあって背筋を伸ばした常連たちは、数杯飲んだら静かに帰っていく。この街の酒飲みはみな品がある。
堀切菖蒲園の名物といえば焼酎を炭酸で割り、梅シロップを加えたハイボール(260円)。
気性は穏やかでどれだけ酒を飲んでも声が大きくなることはない。常連たちはそうやってこの店を守ってきたのだ。
『きよし』
東京都葛飾区堀切5-23-6
03-3690-9947
画営業時間:17時~23時(日は15時~)
休み:水曜

撮影・文/キンマサタカ

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週刊実話2025年5月1日号より
※情報は取材当時のものです