エンタメ

『キャラクター』/6月11日(金)より全国公開中~LiLiCo☆肉食シネマ

Ⓒ2021 映画「キャラクター」製作委員会

『キャラクター』
原案・脚本/長崎尚志
監督/永井聡
出演/菅田将暉、Fukase(SEKAI NO OWARI)、高畑充希、中村獅童、小栗旬
配給/東宝

よく、人に「好きな映画のジャンルは?」と聞かれると「人生再生物語」と答えますが、映画紹介を仕事としている立場からは、好きや苦手で作品を分けることはできません。特にホラー映画はやっぱり怖いので、お日様が昇っている時間帯に、頑張って試写会に行ってます。

そんな中、今回のダークエンターテインメント作品の『キャラクター』は、めっちゃ好きなタイプでした。久しぶりに興奮したので「やっぱり、この作品も漫画が原作?」と思いましたが、なんとオリジナルです。

画力はあるんだけど、描くキャラクターが弱いと指摘されたスランプの漫画家。そんな主人公が師匠に頼まれて、深夜に「誰が見ても幸せそうな家」をスケッチしていた時、その家で起きた殺人事件を目撃してしまいます。しかも、逃げて行く犯人らしき者も…。主人公は、その時の記憶を頼りに犯人を描くと、今まで浮かんで来なかったようなストーリーが、まるで犯人が乗り移ったかのように次々と浮かんでくる。そして、描いた漫画と同じ物語が実際に起きてしまいます。

初演技とは思えないFukaseさんに拍手

ストーリーの持って行き方と、菅田将暉さん演じる主人公・山城圭吾の苦悩と葛藤がとてもリアルに描かれていて、目が離せません。結末に向かってハラハラさせる展開と、ラストシーンの残像感溢れるインパクトはヤバい! 内容は殺人という非常に重くて残酷なものですが、その周りで繰り広げられていくドラマが人間臭くて、どこか共感してしまいます。

菅田将暉さんの才能は、すでにご存じだと思いますが、さらに驚きました。今回は漫画家として3つの大きな段階を演じなければならない。「何も描けないポンコツ漫画家の時」「初めてヒットして無我夢中で描く時」「描いてるものと同じ事件が起こって途方に暮れる時」。それぞれの横顔のアップを切り取って並べたくなるほど、その場面だけで主人公の内心を読み取れる素晴らしい演技でした。

そして高畑充希さんが、優しくソフトに演じる奥さんにもハラハラドキドキ。見ているこっちが「それ言っちゃダメー!」と止めたくなるけど、きっと、どの奥さんだってそうするでしょう。悪化する日常、そして犯人。徐々に解き明かされる人物像…。初演技とは思えないほど不気味で狂気に溢れる『SEKAI NO OWARI』のボーカルのFukaseさんにも拍手を贈りたい。

完全娯楽として練りに練られたストーリーに、興奮度はマックスです!

LiLiCo
映画コメンテーター。ストックホルム出身、スウェーデン人の父と日本人の母を持つ。18歳で来日、1989年から芸能活動をスタート。TBS『王様のブランチ』、CX『ノンストップ』などにレギュラー出演。ほかにもラジオ、トークショー、声優などマルチに活躍中。

あわせて読みたい