スルメイカとクロマグロ“豊漁”に漁業関係者の悲喜こもごも

AIで生成したイメージ
近年、不漁が続いていたスルメイカが太平洋側を中心に9月から豊漁となり、漁業関係者が歓喜している。

スルメイカは主に日本海を含む北西太平洋に生息し、黒潮や対馬海流に乗って成長しながら北に向かって群れで長距離を移動する。

年間漁獲量は1970年代から2000年まで数十万トンで推移していたが、以降は減少傾向に転じていた。

「国の研究機関『水産研究・教育機構』は今年の夏以降、日本の漁場に来るスルメイカの量は日本海側で過去最低水準になり、全体としても低い水準の見通しを発表していた」(漁業ライター)

しかし、ふたを開けてみると、全国的にスルメイカは豊漁。9月1日に今季の底引き網漁が開始された福島県・相馬沖では漁獲量が昨年の約2.5倍。地元漁民からは「近年、こんなに獲れたことはない」と驚きの声が上がっている。

「相馬市の松川浦漁港では、9月第2週に1日の水揚げが40トンを超える日も出た。相馬双葉漁協の9月10日までの水揚げ量は約84トンで昨年同期の倍近く獲れています。三陸沖でも前年の倍以上の水揚げが確認されています」(全国紙記者)

【関連】サンマは豊漁、秋サケは不漁 明暗分かれる秋の味覚たち ほか

豊漁でクロマグロは漁獲枠めいっぱい

太平洋側のスルメイカ豊漁について、水産庁は’17年から続いていた黒潮の流れが大きく曲がる現象の黒潮大蛇行が今年4月に終息し、スルメイカの生息域の海水温などが成長に適した水準に下がった可能性があるとみている。

一方、クロマグロの餌にされて減少説がある石川県のスルメイカ漁には異変が起きていた。

「石川県ではクロマグロが予想を超える大漁なんですが、漁民は素直に喜べないのです」(地元関係者)

クロマグロには漁獲制限がある。今年度、石川県での大型マグロ(30キロ以上)の漁獲枠は65.6トン。7月末時点ですでに漁獲枠は92%に達しているのだ。

「今後、クロマグロが獲れても海に逃がさなければならない。スルメイカを餌にするクロマグロは“厄介者”でしかありません」(同)

庶民にとってはサンマに続くスルメイカの豊漁は大歓迎だが…。

「週刊実話」10月23・30日号より