【難読漢字よもやま話】「阿る」なんて読む? 言葉にまつわる由来と豆知識


正解は「おもねる」

【漢字の由来と語源】
「阿る(おもねる)」の語源は、一説には仏教用語の「阿諛(あゆ)」から来ていると言われています。この言葉は相手の機嫌を取り、喜ばせることを意味する言葉です。これが転じて、人にへつらうことを言うようになったと考えられています。

また、漢字の由来については「阿」という漢字は「可」と、意味を表す「阝(こざとへん)」から構成されており、前者には「よい」「認める」といった意味があり、後者は「寄りかかる」「付き従う」といった意味合いを持ちます。

つまり「相手に寄りかかり、相手を良いと認める」というニュアンスを表しており、それが「へつらう」という意味につながったと考えられます。

【おもねるに関する豆知識】
●歴史的な有名例
江戸時代の大名・徳川家康は、家臣たちから「おもねり」の対象として知られていました。家康の側近たちは彼の機嫌を取るためにさまざまな策を講じ、それが「家康の狸親父」イメージを生んだと言われています。

●「おもねる」行為の裏にある心理
「気遣い」や「配慮」とも似ていますが、これらは純粋に相手への思いやりが根底にあります。対して「おもねる」の裏にあるのは基本的に自己保身で、承認欲求、出世欲、あるいは相手への恐怖心などが存在します。まさに似て非なるものなのです。

●動物界にも存在する「おもねり」
チンパンジーなどの霊長類は、群れのリーダーに「おもねる」行動(毛づくろいや食べ物の分け前を譲る)を見せます。これは人間の「おもねる」と似ており、生物学で研究されています。

●負の影響
過度なおもねりは「イエスマン症候群」を引き起こし、創造性を阻害すると言われています。実際、企業研修で「おもねり」を避けるトレーニングが行われるほどです。

●現代は「おもねり」が花盛りかも?
SNS時代では「おもねる」が「いいね!」やリツイートで表現され、インフルエンサーへの「デジタルおもねり」が増えています。2020年代の新しいトレンドとして注目されています。
時代劇ではおなじみのおもねる風景