120年の時を経てDNA鑑定で浮かび上がった「切り裂きジャック」犯人像の核心部分

横たわる鑑定法の不確かさ

科学的捜査の進歩によって解決する難事件は珍しくはない。

しかし、そこには当然ながらデータ以外の論理的説明が伴わないため、往々にしてどこか釈然としない部分も残る。それが遠い過去の事件であればなおのこと。

しかし、この鑑定でコスミンスキーが真犯人だというのは、やや早計である。まず、このショールは2007年に、切り裂きジャック研究家がオークションで入手したものだという。

複数の所有者の手を経ていく過程を考えれば、証拠品としての信憑性はかなり疑わしい。

また、この鑑定ではミトコンドリアDNAが用いられているところにも留意したい。

通常、科学捜査で用いられるのは固有の遺伝子情報を持った核DNAで、ミトコンドリアDNAが一致したということは、同じ母系を持つことを示しているにすぎない。

つまり肝心の精液が、コスミンスキーのものであったと証明できたわけではないのである。

週刊実話増刊『迷宮事件の真実』より一部を抜粋