目黒、目白のほかに「目赤」「目青」「目黄」があった!? 山手線30駅名に隠された東京の秘密

『山手線「駅名」の謎』鉄人社/1,700円(本体価格)
『山手線「駅名」の謎』著者:小林明(こばやし・あきら)
1964年、東京都生まれ。スイング・ジャーナル社、KKベストセラーズなど出版社の編集者を経て、2011年に独立。現在は編集プロダクション、株式会社ディラナダチ代表として『歴史人』(ABC アーク)などの編集を担当する。

有楽町は織田有楽斎が由来でない?

――もともと山手線の駅名には、諸説があったとか。
小林「駅名は周辺の『地名』から来ていますが、長い年月の間に地名が変化し、原型が分からなくなってしまうことが多いんです。
例えば『有楽町』は織田信長の弟の織田有楽斎に由来するというのが定説ですが、『浦が原』という湿地帯を起源とする説もあります。
有楽町界隈は、もともと日比谷入江という湿地帯で『浦が原』と呼ばれており、浦が原→有楽原→有楽町に転じた説の方が信ぴょう性は高いです。
そうした諸説から真相を探ったのが本書。でも、結局何が本当かは分からない駅名が多いから『謎』なんです」

――目黒、目白のほかに、目赤、目青、目黄があったとは驚きです。
小林「目黒と目白は江戸を守る不動明王を祭る目黒不動尊と、目白不動尊に由来するといわれますが、実は『目赤』『目青』『目黄』の不動尊もあり、5つの寺院が江戸を取り囲むように鎮座しています。
これを『江戸五色不動』といって、現在も健在。ただし、古い時代までさかのぼると、そもそも『目』は『馬』という文字だった可能性もあり、実際に目黒不動尊の由緒には『目黒とは“黒い目の馬”の意味かもしれない』との説が載っています」

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鉄道発祥駅は新橋にあらず!

――新駅「高輪ゲートウェイ」は賛否を呼びました。
小林「JRが新設の駅名を公募した例は『あしかがフラワーパーク』(栃木県足利市)がありますが、山手線の駅では初。公募結果は1位『高輪』、2位『芝浦』、3位『芝浜』で『高輪ゲートウェイ』は130位。何のための公募だったのか…。
なお高輪には江戸時代、『大木戸』といわれた関所があり、ゲートウェイはこの大木戸のこと。大木戸という伝統ある史跡をゲートウェイと横文字に変換してしまったことに対しても、批判は多いですね」

――興味深いエピソードのある駅を教えて下さい。
小林「新橋の駅名は文字通り『新しい橋』ですが、いつ、どこに架かった新しい橋だったかは知られていません。
17世紀初め、現在の新橋駅北側に建設されたのが新橋。明治32年には木製から鉄橋へ改架された堂々たる名所でしたが、昭和39年、首都高速を建設する際に取り壊され、橋の端にあった太い柱だけが銀座8丁目交差点脇に残っています。
『鉄道発祥の駅』とされていますが、実は品川の方が4カ月早く仮開業していることも意外と知られていないなど、山手線の駅には今も『謎』が多いんです」

(聞き手/程原ケン)

「週刊実話」10月2・9日号より