
「化学」と聞いて、「分からん!」と即座に拒否反応を示す人は多いのではなかろうか? それほどなじみがない読者も少なくないだろう。
だが、本当は化学はとても身近な存在ということを教えてくれるのが、『絶対に面白い化学入門 世界史は化学でできている』(ダイヤモンド社/1870円)だ。
マイケル・ファラデーというイギリスの化学者がいる。19世紀の人物だ。電磁場の基礎理論を確立した偉人だという。電磁場と聞いただけで気絶しそうだが、しかし、ファラデーが発明した「電磁回転装置」がなければ発電機、つまりモーターはない。
奥深く、知ると楽しく、恐ろしい…
火も、石油も、ガスも、化学によってエネルギーとなった。ビールやワイン、醸造酒も化学の産物であり、ガラスの生成もそう。今やいつでもどこでも食べているなじみ深いカレーライスの誕生にも、化学は深く関わっている。衣食住のあらゆるモノは、化学によってもたらされた。「世界は化学でできている」というわけだ。
恩恵にあずかっている一方で銃・戦車・戦闘機、さらに核兵器を生んだ。毒ガスもだ。人類の滅亡に結びつく大量殺りく兵器は、化学の成長の弊害でもある。
このように見ると、「化学ってスケールがデカッ!」。そして奥深く、知ると楽しく、恐ろしくもある。
日本でもコロナのワクチン接種が本格的に始まったが、今後は抗体検査などにも化学の力がより必要になってくるらしい。我々は、化学にますます頼ることになるのだろう。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)