陣痛で大パニック! 正気を失い病院に被害をもたらした空手有段妊婦の過激な出産劇

看護師を壁に叩きつけ大暴れ

ベッドでのたうち回っていた陽菜さんはシーツやベッドパッドを放り投げ、点滴を引きちぎり、装着したままの陣痛監視装置を振り回し、奇声を上げて地団駄を踏むように暴れ出したという。

「とにかく興奮して手がつけられない状態でした。押さえつけようとした看護師はものすごい力で壁に叩きつけられて軽い脳震盪を起こしていましたし、私も思いっきりお腹を蹴られてうずくまってしまいました」

尋常ではない物音と悲鳴に慌てて駆け付けた医師も信じがたい光景に絶句。「鎮静剤を打っておとなしくさせよう」とした瞬間に陽菜さんが破水し、急激に分娩が進んだことで否応なしに分娩室に連れて行かれたという。

「応援の看護師を頼み、5人がかりで運びました。それからはいきみのタイミングを合わせるのに必死で暴れる余裕はなかったみたいです」

無事に女の子を出産した陽菜さん。最終的な分娩所要時間は6時間44分。初産にしてはかなりの「安産」だ。

陽菜さんの話に戻ろう。

「産んだ後は力尽きました。後産や会陰切開の痛みはありましたけど、陣痛に比べれば生理痛レベル。生まれたばかりの我が子が愛しくて涙が出そうでした」

陽菜さんがベッドの上で多幸感にひたっていた頃、出張先から駆けつけたご主人は妻や子の顔を見る前に事務室に呼ばれ、バイオレンス映画も真っ青な経緯について説明を受けていたらしい。

「めっちゃ青ざめてましたね。子どもが生まれてうれしいはずなのに、それどころじゃないっていう感じでした(苦笑)」

「こんなことなら無痛分娩にすれば良かったと思いました。麻酔代をケチったばかりに却って高くついちゃいました」

最後にこう語ったのは、「すぐにでも二人目が欲しい」という陽菜さんの横で力なく笑うご主人だった。

取材・文/清水芽々

清水芽々(しみず・めめ)

1965年生まれ。埼玉県出身。埼玉大学卒。17歳の時に「女子高生ライター」として執筆活動を始める。現在は「ノンフィクションライター」として、主に男女関係や家族間のトラブル、女性が抱える闇、高齢者問題などと向き合っている。『壮絶ルポ 狙われるシングルマザー』(週刊文春に掲載)など、多くのメディアに寄稿。著書に『有名進学塾もない片田舎で子どもを東大生に育てた母親のシンプルな日常』など。一男三女の母。