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市場に逆風…ホンダ「軽トラ」生産終了の衝撃!~企業経済深層レポート

市場に逆風…ホンダ「軽トラ」生産終了の衝撃!~企業経済深層レポート 
企業経済深層レポート (C)週刊実話Web

ホンダの軽トラック『アクティ・トラック』が、この4月で生産を終了した。

1963(昭和38)年8月に『T360』で軽トラ市場に参入したホンダは、これで58年の歴史に幕を下ろすことになる。今や独自モデルを残す軽トラは、ダイハツ『ハイゼットトラック』とスズキ『キャリイ』のみとなってしまった。

「77年7月に発売されたアクティ・トラックは、ダイハツやスズキがFRだったのに対し、エンジンをアンダーフロアに搭載したMRを採用。このため〝農道のフェラーリ〟とも呼ばれ、多少のぬかるみや急斜面を苦にしない抜群の推進力で、多くの人に愛されました」(自動車ライター)

軽トラは「小型でも積載量が多い」「小回りが利く」「販売価格が安い」と三拍子そろい、農業や漁業、林業など第一次産業に不可欠ともいわれてきた。では、ホンダ撤退の背景にいったい何があったのか。

「ホンダが軽トラの生産をやめた理由は3つあります。まず、利用層の変化で販売台数が激減したこと、次に販売戦略が時代にマッチしなかったこと、そして、規制強化への対応が難しいと判断したことです」(同)

全国軽自動車協会連合会によると、軽トラの販売台数のピークは88年の43万7435台とされており、これが98年には28万6081台、2019年には17万9610台にまで落ち込んでいる。

「ホンダのアクティ・トラック最終型は、10年に約3万4500台を販売しました。同年のライバル車の売れ行きは、ダイハツのハイゼットトラックが約6万5000台、スズキのキャリイが約5万8000台で、この時点で販売格差が生じていました」(同)

独立精神の強いホンダの弱み

そして、13年にキャリイが現行型にフルモデルチェンジされ、14年にはハイゼットトラックも新型になると、さらにアクティ・トラックは失速する。

「20年の軽トラ販売台数は、ハイゼットトラックが約7万8000台、キャリイが約5万6000台、対するアクティ・トラックは約1万5000台と大きく水をあけられました」(同)

しかし、ダイハツとスズキの2強が踏ん張り続ける中で、なぜホンダだけが低迷したのか。そこに関係してくるのが販売戦略の差だという。

「ダイハツ、スズキは軽自動車を中心とした企業のため、おのずと軽トラ販売にも力が入り、積極的な営業を展開してきました」(自動車メーカー関係者)

しかも、両社の軽トラックは、ホンダと違ってOEM車として他メーカーにも供給されている。

例えば、ダイハツのハイゼットトラックは、スバル『サンバートラック』やトヨタ『ピクシストラック』として合計3社で扱われ、OEM車を含めた19年の販売総数は約9万1000台にのぼる。

同様にスズキのキャリイも、日産『NT100クリッパー』やマツダ『スクラムトラック』、三菱『ミニキャブトラック』として合計4社で販売され、19年の総数は約7万7000台だ。

独立精神の強いホンダは、どのメーカーとも組まず、ひたすら独自で販売を続けてきた。しかし、軽トラックは薄利多売の軽自動車の中でも、特に1台あたりの粗利が限られて大量に生産する必要がある。

OEM供給で少しでも多くの製品を売ったほうが、経営的にプラスとなるという見方が強いのだ。

キャンプブームが追い風に!?

また、法改正に伴う規制強化の動きも、ホンダが軽トラからの撤退を余儀なくされたことにつながる。

「高齢運転者による交通事故などの削減に向け、法改正がされました。今後、日本で生産される新型車は21年11月から、継続生産の軽トラに関しても27年12月から、衝突被害軽減ブレーキ機能の搭載が義務化される。ホンダは市場が縮小傾向にある中、新たな安全装備を開発するコストを考えると、収益がさらに薄くなると決断したのです」(同)

さて、ホンダの撤退により、今後の軽トラ市場はどうなるのか。

「軽トラ販売を上向かせるために、ダイハツはまず農業の活性化が近道と、農水省による『農業女子プロジェクト』に参画。軽トラのフロントにUV&IR(紫外線と赤外線)カットガラスを装備するなど、女性向けアイテムを充実させることに積極的です」(モータージャーナリスト)

また、軽トラ市場が仕事以外の目的で活性化していることも、今後の希望材料として挙げられる。

「新型コロナ禍での3密回避のキャンプブームと併せ、軽トラをキャンピングカーにする人が増えている。通常のキャンピングカーを購入するより安価なことも魅力だが、女性に『ミニサイズでかわいい』と好評なことも人気を盛り上げている。また、米国でも軽トラの利便性に対して、これまでにないほど評価が高まっています」(同)

こう見てくると、今後、再び軽トラ市場が活性化することもありそうだ。電動化という壁があるにしても、撤退したメーカーが軽トラ再興に乗り出す可能性も捨てきれない。

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