世界的な抹茶ブームの裏で国内製茶業の廃業が過去最多に

AIで生成したイメージ
世界に広がる抹茶ブーム。製茶業界は、さぞかし好景気に沸いていると思いきや、その裏で実はさまざまな歪みが生じているというのだ。一体、製茶業界で何が起こっているのか。

8月4日に帝国データバンクが発表した「『製茶業』の倒産・休廃業解散動向(2025年1~7月)」によると、製茶業の廃業が増加しており、今年は過去最多ペースで推移しているという。

前述の通り、抹茶スイーツや抹茶ラテなどインバウンドをはじめとする国内外の「抹茶ブーム」で、製茶業界では近年、スイーツや菓子などに抹茶が使用される機会が増加。

製菓メーカーなど新たな需要先の開拓に成功した企業が多くみられたほか、健康茶やティーバッグ加工など付加価値の高い製品が好調で、持ち直しの機運が高まっていた。

【関連】保育園の倒産3年連続で増加 待機児童問題解決も児童の獲得競争が激化 ほか

インバウンド向けでない業者の業績が悪化

しかし、世界的な「抹茶ブーム」の過熱により、大手飲料メーカーなどで需要が増加した。また、原料確保に伴う大量買い付けによって茶葉価格が急騰したことや、高単価で取引される抹茶用の茶葉生産にシフトする生産農家が増加したことで、煎茶やほうじ茶などに加工するための茶葉で仕入価格が上昇。

光熱費などの上昇も重なって高コストでの生産を余儀なくされ、製茶業者の経営に悪影響を及ぼすケースが出始めているという。

さらに若年層の日本茶離れのほか、主要な販売先だった仏事・葬儀向け需要の低迷も背景に、従来の茶葉から淹れるリーフ茶などは価格転嫁が容易ではない。

特に海外輸出やインバウンド向けの販路を持たない製茶業者が業績悪化に直面するケースがみられるという。

抹茶をはじめ、世界に広がる日本食ブームだが、急激な市場拡大は業界全体に歪みを生み出すことも多く、その舵取りは非常に難しいようだ。

「週刊実話」9月11日号より