郷ひろみ『恋の弱み』を好きな理由は「だって、かっこいいんだもん」イントロと都会的な歌詞が魅力

『恋の弱み』はいま聴いても鳥肌もの

今あらためて歌詞を読んでも、どんなシチュエーションか分かりにくいのですが、それでも「スカイハウス」「エレベーター」「白いビル」「サイド・ミラー」「ルームライト」…など、橋本淳による都会的な単語群、そして何といっても「Get Down」のとりことなったのでした。

作曲・編曲は筒美京平。ブラスがジャジーに盛り上がるイントロなんて、今聴いても鳥肌もの。出てくる言葉は「だって、かっこいいんだもん」しかない。

今や筒美京平といえば昭和歌謡界のレジェンドとして、語り尽くされた感があります。

ただジュディ・オング『魅せられて』(’79年)や、近藤真彦『スニーカーぶる~す』(’80年)などのミリオンセラーもいいのですが、それほどには売れなくとも、東京の「スカイハウス」から遠く離れた東大阪の歌謡曲少年の心を震わせたこの曲の魅力は、もっともっと語られていいと思っています。

なお私が選曲した筒美京平の作品集CD『筒美京平 マイ・コレクション スージー鈴木』(ユニバーサル)は、郷ひろみバージョンと近田春夫&ハルヲフォン・バージョン何と2つの『恋の弱味』が収録されているのが「強味」です。ぜひどうぞ。

「週刊実話」9月4日号より

スージー鈴木

音楽評論家。1966年(昭和41年)、大阪府東大阪市出身。『9の音粋』(BAYFM)月曜パーソナリティーを務めるほか、『桑田佳祐論』(新潮新書)、『大人のブルーハーツ』(廣済堂出版)、『沢田研二の音楽を聴く1980―1985』(講談社)など著書多数。