線路越しに誘う三角形の赤い看板 袋山『山吹』

「串焼き」1本150円~。串焼きはこだわりのタレでいただく。つくね、鳥皮、豚レバー(どれも150円)は火入れが絶妙。
電車からぼーっと車窓を眺めていると、線路脇の看板に目が留まった。

赤いカンバスには「ホッピー・もつ煮・もつ焼」と書いてあり、とてもにぎわっている。

新鮮なモツを使った煮込み(550円)。
大人になれば大抵のことは経験するが、初めて降りる駅で、見知らぬ居酒屋に行く。これは独特の緊張感がある。

だが、のれんをくぐると一気に肩の力が抜けた。

酔客の穏やかな雰囲気。清潔な店内。とびきりの笑顔で迎えてくれた女性店主は、焼き台にも立ち、注文をさばいていく。
焼き台にも立ち、注文をさばいていく女性店主。
「常連さんはホッピーが多いですね。昔は常温、今は皆さん氷を入れますね」

温暖化の波はここまで来ているということか。
店主が注ぎ方にこだわる生ビール(600円)。ほかは大瓶の赤星650円、ホッピーセット500円など
60年前から営業する『山吹』は、この一帯では最も古い店らしい。親子二代という常連も珍しくなく、老いた親の手を息子が引いて訪れるとか。親孝行な息子である。
刺し身盛り合わせ(時価。600円~)は調理専門の板前さんが担当。
変わらず愛され続ける秘密は店主にありそうだ。

「前の店主はここの常連さんで、後を継いだの。私も元々ここの常連だったんですよ」
焼き台でさっと焼くので香ばしい国産牛のサーロインステーキ(650円~。仕入れにより変動)。
店を愛する者が後を継ぐ。店のDNAが失われない理由がよく分かった。
東武スカイツリーライン大袋駅から徒歩1分。店は線路脇にあり、家路を急ぐサラリーマンに手招きしているようだ。
埼玉県越谷市袋山1288-9
048-947-0852
営業時間:16時~21時(日曜は13時~20時)
休み:月曜(不定休有り)
 
「週刊実話」2025年2月27日号より
※情報は取材当時のものです 

撮影・文/キンマサタカ

男がほれる酒と肴「ホの字酒場」】アーカイブ