生活保護申請者の7割が門前払いされる「水際作戦」の実態

「内縁の夫疑惑」で母子家庭手当が打ち切りに

A子さん同様、離婚後生活に困窮して生活保護を申請したものの却下されたのは3人の子どもを育てているB子さん(40歳)だ。

「幼児2人と小学校低学年の子どもを預けながら、家族4人が食べられる仕事なんてありません。まして、下の子は身体が弱くて病院通いも多かったのでパート先を見つけてもすぐにクビになりました」

やむを得ず福祉事務所を訪れたそうだが「簡単に保護に頼ろうとする前に自分で何とかするのが親の務めなんじゃないですか?」と言われ「相手にされなかった」というB子さん。

その後、母子家庭支援のNPO法人の紹介で格安の住居と仕事を紹介してもらい、自治体からの母子家庭手当を頼みの綱にして生活していたそうだが、ある日突然、打ち切られたという。

「理由は『内縁の夫がいる疑いがある』というものでした。もちろん、そんな事実はなく、同僚の既婚男性が、趣味の家庭菜園でとれた野菜や果物を家まで届けてくれたことが何度かあっただけなんですが、『同居はしていなくても経済的援助を受けているとみなされる』というんです。
特別な関係でもないのに、いろいろ邪推されましたし、セクハラまがいの質問もされました。『相手にも聞き取りをしたい』とまで言い出したので、それでは迷惑をかけてしまうと思って拒否をしたら『潔白であるという証明ができない』と言われました」

母子家庭の認定が取り消されたことで再度生活保護を申請したというB子さんだが、結果は却下。

現在は子どもたちを養護施設に預け、親子の生活を立て直すために「他人に言えない仕事」を続けている。

取材・文/清水芽々

清水芽々(しみず・めめ)

1965年生まれ。埼玉県出身。埼玉大学卒。17歳の時に「女子高生ライター」として執筆活動を始める。現在は「ノンフィクションライター」として、主に男女関係や家族間のトラブル、女性が抱える闇、高齢者問題などと向き合っている。『壮絶ルポ 狙われるシングルマザー』(週刊文春に掲載)など、多くのメディアに寄稿。著書に『有名進学塾もない片田舎で子どもを東大生に育てた母親のシンプルな日常』など。一男三女の母。