【難読漢字よもやま話】「蝉時雨」なんて読む? 言葉にまつわる由来と豆知識


●「時雨」に込められた日本の美意識
「蝉時雨」の「時雨」は、秋から冬にかけて降る通り雨のこと。なぜ夏の蝉の声に、秋冬の雨の言葉が使われるのでしょうか。

これは、日本の言葉が持つ独特の比喩表現と美意識の現れと言えます。

「時雨」は、しとしと降ったり、サッと止んだりする、どこか繊細で情緒的な雨を指します。蝉の声も、単調な大音量ではなく、時には重なり合い、時には途切れ、まるで無数の小さな音の粒が降り注ぐかのように聞こえます。

この音の繊細さ、そして一瞬の生命の輝きが満ちていることを「時雨」という言葉が的確に捉えているのです。単なる「雨」ではなく「時雨」という言葉を選ぶことで、より詩的で奥深い情景を描き出しています。

●実は地域や蝉の種類で音が違う?
一口に「蝉時雨」と言っても、地域やその時期に多く鳴いている蝉の種類によって、聞こえ方は微妙に異なります。

例えば、本州の平野部で多く聞かれる「アブラゼミ」や「ミンミンゼミ」の時雨と、西日本や南方でよく聞かれる「クマゼミ」の時雨では、音の質や響きが全く違います。

クマゼミが多い地域では、まるでシャワーが降り注ぐような力強い「蝉時雨」が聞こえるでしょう。

このように、その土地の自然環境を音で感じ取ることも、「蝉時雨」の楽しみ方の一つと言えます。

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