世界にいくつも存在する「聖杯」の不可解さ

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キリスト教の最後の晩餐で使用された、または十字架上のキリストの血を受けたとされる「聖杯」の存在を広く世に知らしめたのは、ジョージ・ルーカス監督の映画『インディ・ジョーンズ 最後の聖戦』(1989年公開)ではないだろうか。

シリーズは第1作の『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』で、旧約聖書に記された十戒が刻まれた石板を収めた「契約の箱」を巡る争いを描き、大人気に。シリーズ第3作目となる『最後の聖戦』で再びキリスト教にまつわる秘宝を取り上げ、世界的興行収益4億7420万ドル(約646億円)という大ヒットを収めた。

「以後、数々の映画で聖杯や聖櫃をはじめとするキリスト教の聖遺物がテーマとなった。歴史に彩られた謎の多さと影響力が秀逸で、秘宝を探し求める冒険活劇やミステリー映画には欠かせないアイテムとなったのです」(映画ライター)

いにしえの歴史の中で、それらはいったいどこへ消えてしまったのか。あるいは、人知れずどこに安置されているのか。

『シン・世界の七不思議と超古代文明の謎』(小社刊)では、世界にいくつも存在する「聖杯」の不可解さを取り上げている。

ヒトラーも聖杯を探して争った

聖杯は普通に考えれば一つしかないはずだが、歴史のなかではいくつもの聖杯が登場する。

そのうち7世紀にエルサレム近くの教会で目撃された聖杯は所在不明だが、それ以外にイタリアのジェノヴァ大聖堂、スペインのバレンシア大聖堂、ニューヨークのメトロポリタン美術館に聖杯とされるものが現存する。

ただ、いずれも本物である決定的な証拠はなく、メトロポリタン美術館の聖杯に関しては、その後の研究で6世紀頃につくられたものと推測されている。

そのほかスコットランドのロズリン・チャペルの螺旋柱の中に聖杯があるともいわれるが、建物をすべて金属探知機で調べてもそれらしき反応は見いだせなかった。

一方で聖杯とはフランスに伝わる「イエス・キリストの血脈」のことだという説もあり、これは映画『ダ・ヴィンチ・コード』の題材にもなった。

ヨーロッパでは聖杯を探し求める騎士の物語「聖杯伝説」が語り継がれており、そこでいう聖杯とは最後の晩餐で使われた杯、あるいは十字架上のイエスの血を受けた杯とされる。

その聖杯伝説のうち、とくに有名なものが、アーサー王物語における円卓の騎士に関連したものである。

伝説における聖杯は病気治癒など超常の力を持つとされ、騎士たちだけでなくヒトラーなど歴史上の様々な人物が聖杯を探して争ったとされる。

また、聖杯伝説は重要な観光資源にもなっている。

アーサー王の墓所があるとされるイギリス・グラストンベリーには、イエスの血を受けた聖杯から湧いているという井戸「チャリスウェル」があり、日々、多くの観光客が水を汲みにきている。

シン・世界の七不思議と超古代文明の謎』(小社刊)より一部抜粋